トランプの弱みを突く正恩の誘い

2回目の米朝首脳会談を開くというニュースは、北朝鮮の非核化が進んでいない状況が知れ渡っているだけに、「会って、実のある話ができるのだろうか」と疑問に思った人も多いのではないか。

ホワイトハウスのサンダース報道官が10日の記者会見で、明らかにしたもので、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長がトランプ大統領に米朝首脳会談の開催を求める親書を送り、米側は「すでに(北朝鮮側と)調整をしている段階にある」という(朝日新聞)。

サンダース報道官は会見で、「親書は大変暖かく、ポジティブな内容」と歓迎し、「北朝鮮の最近(9日の建国記念)パレードに核兵器はなく、大統領のこれまでの政策が素晴らしい成功を収めている。親書は、米朝関係が進展しているさらなる証拠」と自画自賛している(Press Briefing)。

しかし、「北朝鮮の非核化をめぐる交渉で、米国が再三にわたり北朝鮮側に提案を伝えているものの、いずれも拒否されている」とCNNは8月に伝えている。その後も、ポンペオ国務長官の訪朝が突然、キャンセルされるなど、交渉は進んでいない。

金正恩委員長は、非核化の期限について、5日に会談した韓国特使団に「トランプ大統領の任期が終わる2021年1月まで」と述べたという。しかし、10日の米NBCテレビは、「複数の米政府当局者の話として、北朝鮮が6月の米朝首脳会談以降、少なくとも1カ所の核弾頭保管庫で入り口を覆う構造物を建設し、隠蔽工作をしていた」、「また、政府当局者の話として、2018年中に北朝鮮が新たな核兵器を5~8個製造する可能性があると米情報機関が分析している」と伝えるなど、米側の疑念は消えていない(共同電)。

北朝鮮のベストシナリオ

北朝鮮側の当面のベストシナリオは、年内に朝鮮戦争の終戦宣言を実現し米側から体制保証を得ることで、そのために、9月18日から20日までの南北首脳会談、ニューヨークでの国連総会を舞台にした米韓首脳会談を経て、南北で米側に終戦宣言を持ちかけていくとの見方が出ている。

一方、米側、もっと絞るとホワイトハウス側は、サンダース報道官の発言でもわかるように、11月の中間選挙を前に、北朝鮮との交渉を実績として誇示したい気持ちがある。

とりわけ、トランプ大統領は、ロシア疑惑の火種が消えず、中間選挙の結果によっては弾劾される可能性もあり、ごく最近は、政府高官の匿名批判記事(Kobaちゃんの硬派ニュース)やワシントン・ポストのウッドワード記者による政権暴露本が出たりと、苦境の真っただ中にある。このため、首脳会談を実施して、北朝鮮側のわずかな譲歩を自画自賛したり、あるいは終戦宣言の誘いに応じる可能性もあるのではないか。

今回の親書を対北朝鮮強硬派のボルトン大統領補佐官はどう受け止めているのか。たまたま10日に行われたスピーチの中で、同補佐官は、金正恩氏が非核化の約束を果たすのを始めないことへの不満を表明し、そこには楽観トーンはまったくなく、「2回目の首脳会談が開かれる可能性は確かにある。しかし、トランプ大統領は、開けているドアに北朝鮮を入らせることができない」と述べたという(New York Times)。

会談の正式決定までにはまだ紆余曲折がありそうだ。

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