北朝鮮「火星15」ミサイル発射、いまなぜ

29日未明、北朝鮮は9月15日以来、弾道ミサイルを発射した。北朝鮮の挑発がしばらくとだえていたことから、朝鮮半島核危機は緩和ムードを感じさせたが、金正恩朝鮮労働党委員長の対決姿勢は変わっていなかった。

今回発射したミサイルについて、北朝鮮は、「アメリカ本土全域を攻撃できる超大型の核弾頭の装着が可能な新型のICBM=大陸間弾道ミサイル『火星15型』」と発表した。2カ月半の沈黙の後、なぜ、いまこの時期に発射したのか。

逆に、なぜ、しばらくの間、発射しなかったのか、その理由について、韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相が、たまたま28日の外国メディアの会見で語っていた。日経新聞電子版から引用すると、趙統一相は、

「北朝鮮が約70日にわたり大きな挑発を自制している背景については、(1)冬場はそもそも挑発が少ない(2)技術開発に時間を要している(3)経済成長を優先している(4)米軍の戦略兵器が抑止力として効いている――の4つの要因が複合的に作用していると分析し
た。」という。

いずれの理由も決め手になるほどの説得力を有しているようにはみえない。そのことは、29日のミサイル発射ではっきりした。

米国が北朝鮮をテロ支援国家に再指定したことへの反発との指摘もある。確かにそれもあるだろう。米国に強気の姿勢を見せないと、正恩氏の求心力が低下することも考えられる。先日、正恩氏の最側近の1人と見られていた黄炳瑞・朝鮮人民軍総政治局長が処罰されたとのニュースが流れたが、軍の強硬派からの圧力も想像できる。しょせん、北朝鮮内の権力闘争はブラックボックスだが。

ただ、最近の内外の経過を見て、ひとつ浮き彫りになるのは、中国への配慮だ。5年に1回の習近平総書記にとっては大事な大事な中国共産党大会や米中首脳会談、中国特使の北朝鮮訪問などのスケジュールの間は、さすがに挑発を控えていた。

もっとも、北朝鮮は5月に、習近平総書記肝いりの「一帯一路」の国際会議の開幕日にミサイルを発射している。2カ月半の沈黙の後の挑発は、対中姿勢への微妙な変化なのだろうか。
技術上の必要性を指摘する見方もある。『ウォールストリート』電子版は、こんな見方も伝えている。

「民間シンクタンクのストラトフォーでアジア地域のアナリストを務めるロジャー・ベイカー氏は、「米国がどれぐらいの精度でシグナルを拾っているか、北朝鮮は試している。どれだけ早くミサイルを準備できるのか、先制攻撃に出る能力をテストする一環だ」と話す。」

スポンサーリンク

シェアする

フォローする