「38 North」 米朝「戦争の序曲」という元国務省高官①

新聞やテレビの北朝鮮報道で、写真の出所元として「38 North」というのをよく見かける。アメリカのジョンズ・ホプキンス大コリア研究所が運営している北朝鮮に関する情報サイトだ。

※「38」はもちろん朝鮮半島で南北を分かつ軍事境界線(停戦ライン)の北緯38度線のこと。第二次大戦末期に、アメリカとソ連軍の分割占領ラインも北緯38度線に引かれ、これも「38度線(38th parallel north)」と呼ばれた」。しかし、かつての分割占領ラインといまの軍事境界線は正確には一致しないという。ヘー。(Wikipedia「38度線」より)

軍事ジャーナリストなどからもその存在は聞いていたので、少しのぞいたことはある。 地図などが豊富で「充実したサイト」の印象が残っていた。またアクセスして素人視点でサイト内を巡回してみた。「Affiliates」タグ内にある「North Korea Economy Watch」は、国連の制裁や国際緊張の中で物価が急騰しているとの見出しの記事などホットな話が載っているようだ。

「North Korea Leadership Watch」には、金ファミリーの歴史、金正日、金正恩の経歴などが詳しく紹介されているのが興味を呼んだ。

「Topics」タグ内には過去の寄稿が置かれている。「The New US Sanctions: Moving From Sanctions to Economic War」という原稿が9月22日とごく最近アップされたものなので読んでみた。米朝戦争の危機感にあふれた内容だった。トランプ大統領による新しい制裁が戦争の火種になるという。大統領令による新制裁は日本では、サラッと紹介されている程度なので、それほど重大なものとは気付かなかった。

筆者のJOSEPH DETHOMAS(ジョセフ・デトマス)氏は、米国務省で長く勤務した外交のベテラン。いまはペンシルバニア州立大学教授だ。

原稿に「FOREIGN AFFAIRS」と添えられているので同誌にも寄稿されたものなのか。これは4ページ程度なのでその要約かもしれない。内容を紹介していこう。

DETHOMAS氏は、9月21日に発表された大統領令を問題視している。その制裁内容は「北朝鮮を屈服させるための一方的な経済戦争の宣言」であるという。
大統領令で問題なのは、まず制裁条項第1項の(a)(ⅲ)で、「北朝鮮と輸出入取引した者は、モノはもちろん、サービス、技術も含め資産、所有物を没収することを国務省に許可している」。
また、第4項では、北朝鮮との取引を進めるいかなる銀行に対して財務省に制裁の権限を与えている。制裁違反の罰則は、資産没収やアメリカの金融システムからの締め出しなどドルを利用する銀行にとって致命的な内容となっている。
確かに、この制裁がきちんと実行に移されれば、北朝鮮と取引することがばれた国、企業はグローバルな取引から締め出されるのだから破綻せざるを得ない。怖くて北朝鮮ビジネスには手を出せない。
長引けば北朝鮮経済は干上がるしかない。

DETHOMAS氏は、「もはや制裁は北朝鮮を交渉のテーブルに着かせる国際的な手段ではなく、アメリカの北朝鮮に対する経済戦争の一方的な手段になっている」のであり、「その目的は、経済を壊滅させることで体制を屈服させる、あるいは体制が崩壊する状況を作り出すことにある」と断ずる。

そして、「制裁は戦争に至る道の一つではなく、(もはや)戦争の序曲(They may well be its prelude)かもしれない」と怖い予測を打ち出す。「序曲」である理由をDETHOMAS氏は三つ挙げている。続きは続編に。

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