GAFAと中国に追いつくのはもうムリと思わせる圧巻の研究開発費

「GAFAと呼ばれる巨大IT企業の研究資金や、米国の大学や中国の研究資金は、日本とは桁違いである」。

「まあ、多分そうだろう」と思っている人が多いだろうが、「桁違い」という言葉にはひっかからないだろうか。毎年のようにノーベル賞受賞者を輩出する日本だから、もうちょっとましなのではと思いがちだ。

しかも、この一節、政府が今年6月に閣議決定した「統合イノベーション戦略2019」の中に書かれているものだ。イノベーションを促す研究資金について、日本は圧倒的に劣勢なことを政府自らが認めている。

「桁違い」にひっかかる人も、図1を見れば納得せざるを得ないだろう。10月3日に開かれた政府の第31回未来投資会議に提出された資料だ(7㌻)。同会議のサイトにある。

図1 (出所)第31回未来投資会議

研究開発費、日本企業とGAFAで大きな差

GAFAとトヨタ自動車、ソニー、日立製作所の日本を代表する企業の研究開発費比較である。トップのアマゾン3.2兆円に対し、日本のトップ、トヨタは1.0兆円。GAFAで一番少ないフェイスブック1.1兆円にも及ばない。(ただし、アマゾンの研究費については、他社とは含まれる費目が異なる模様で、多めに計上されている可能性があります。アマゾンの3.2兆円という数字をそのまま単純比較するのは問題がありそうです。財務アナリストの児玉万里子さんからアドバイスを受けました=11月1日追加)。

フェイスブックの売上高は558億ドルに対し、トヨタの売上高は2726億ドルだから、図2の売上高研究開発費比率は、フェイスブックは18%と日本3社に比べ、ダントツに高い。

図2 (出所)第31回未来投資会議

工場を持たないフェイスブックと大規模な生産工場を有するトヨタの研究開発費率を比較するのには難もあるが、フェイスブックが研究開発に生き残りの道を託していることがわかる。

参考に、他のGAFAの売上高を記しておくと、アップル2656億ドル、アマゾン2329億ドル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)1368億ドルとなっている。

もうひとつ参考に、未来投資会議に説明を加えれば、同会議は、国や地方の成長戦略を議論する場で、政府が2013年に設置した「産業競争力会議」などを引き継いで2016年9月に始まった。日本経済再生本部の下、首相を議長として、関係閣僚や企業の代表者らで構成、毎年6月に成長戦略を取りまとめている(日経新聞)。

経済財政諮問会議がマクロ経済政策に関する議論を、未来投資会議がミクロ経済政策に関する議論、という形ですみ分けているが、未来投資会議が社会保障政策など経済財政運営の分野も取り上げ、重心が未来投資会議に移りつつある(日経新聞)。

驚異的な中国の伸び

研究開発費の話に戻すと、GAFAとの比較は分かったが、中国についてはどうか。中国に精通している遠藤誉氏の著書『中国製造2025』(PHP研究所)に、中国の科学技術戦略が詳しく載っている。

その一節を紹介すると、中国は、世界で初めて量子通信衛星の打ち上げに成功した。2016年8月16日のことだ。

量子通信衛星は、既存の暗号を短時間で解読してしまう量子コンピューターでも解読不能の量子暗号を搭載した衛星で、これを実用化できれば、外交、軍事上、一挙に優位な地位に立てる(同書182~183㌻)。

打ち上げを成功させたのは、世界中から優秀な中国人科学者を優遇して母国に迎えるとともに、莫大な研究開発だ。

同書は、ウォールストリート・ジャーナルの記事を紹介しながら、中国政府は「少なくとも量子物理学を含む基礎研究予算は2005年の19億ドルから2015年の1010億ドルにまで上昇していることはたしかだ」(191㌻)と書いている。

日本が太刀打ちできる金額ではない。量子物理学全般ではなく量子暗号に絞った研究開発費ではあるが、2020年度の概算要求額は15億円にすぎないのだから(共同通信)。

経済成長のカギを握るのは技術革新

同書には、米中日独の1996年から20年間の研究開発費の推移図が載っている。2016年を見ると、中国は4500億ドル超で、米国に追いつきそうだ。ざっとみて、この20年間で45倍ほど伸びている。日本は1600億ドル程度、伸びは、20年間で2倍弱ぐらいだ(193㌻)。

前述の「統合イノベーション戦略2019」は、こうした現実を素直に認め、「いまやわが国一国で成長できる時代ではなくなっている」と他国との協力の道を探る提案をしている。

経済成長は、「労働投入量+資本投入量+技術革新など(全要素生産性)から成るというソローの成長モデルに従えば、人口減少下(労働投入量減)の日本経済では、技術革新を通じた生産性の向上が必須。成長のカギを握っている。

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