西川日産社長が思い描く「ゴーンなきルノー・日産体制」

前回のブログに続き、ゴーン逮捕後のルノー、日産、三菱自グループをどうするつもりなのか、クーデタを起こした西川廣人・日産社長の視点をKobaちゃんなりに推測した。

ゴーン氏追放後の最大の懸案は、ルノーとの関係をどうするか。ゴーン氏の不正についての内部通報を受けて、調査を進めてきた数カ月の間に、当然ルノーへの対応も考えてきただろう。

その際に、西川社長は動かしがたい事実、見通しを踏まえて考えたはずだ。それは、①3社連合は、「カリスマ・ゴーン」の存在があってこそ維持できた、②日仏政府間のテーマになる可能性がある、③激変する自動車業界で事業規模が大きい方がいい。世界2位グループは保ちたい--という3つの前提ではないか。ほかにもあるだろうが、最低限この前提を念頭に置き、考えていこう。

ゴーン氏も西川氏も「アライアンス(同盟)」と呼んできたルノー・日産の関係をどうするかは、大きく見れば選択肢は3つしかない。①合併・統合へ進む、②アライアンス維持、③アライアンス解消だ。

①は、フランス政府が望むシナリオと言われている。ルノーの筆頭株主のフランス政府は、雇用拡大や税収増のために日産をルノーの影響下に置きたいというのが、このシナリオに添えられる解説だ。

②は、現在、ルノーが日産に43%出資、日産がルノーに15%出資、日産が三菱自に34%出資という資本関係にあるのに加え、2014年にルノーと日産は協業の強化策として、研究・開発、生産技術・物流、購買、人事の4機能を統合した。

③は、「ルノーお荷物」論だ。ルノーは、技術面でも営業面でも弱体で、上記協業の際、日産幹部は「協業と言えば聞こえがいいが、要するに、日産の経営資源を利用して、病み上がりのルノーを救済するスキームだ」と嘆いている。また、ルノーは、保有する日産株の配当で赤字を免れている(ダイヤモンド)。

この3つの選択肢のうち西川社長はどれを選ぶのか。①は論外だ。そもそもゴーン追放のきっかけは、合併・統合を避けるためと推測されるから、と前回ブログに書いた。

残るは②か③だが、前述した3つの前提の③を考え合わせると、アライアンス解消は選択しにくい。もちろん「お荷物度」が限界に達するほどの重さならば解消もありうるが。

あるいは、ルノーとは縁を切って日産・三菱自でまとまっても、そこそこの規模を保てるから、選択肢としてありうるかもしれない。そのあたりは自動車業界担当の記者やアナリストの分析を聞かないと判断できない。

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アライアンスは維持したい

逮捕当日の西川社長の記者会見では、アライアンスに関する質問はほとんどなかった(AERAdot.)が、5月の日産の決算発表の会見では、質問にこう答えている(ダイヤモンド)。

「自主性が成長の根源でアライアンスの効率性を最大限追求し規模のメリットを追求しながら次の世代に引き渡していけるかが宿題。ゴーンさんも私も仕組みを変えることも必要ということで一致しており今年度以降、具体的に検討していく」
「合併協議している事実はないが、将来の方向への検討は必要でいろいろな形が考えられる」

この発言を信頼する限り、西川社長は、アライアンスを解消するつもりはなく、その点に関しては現状維持だが、出資比率などの見直しは考え続けてきたようだ。自分なりのイメージは描いているだろう。

ルノーとの提携を維持しながら、日産の独立性を担保できる最適解とは何か--最新のダイヤモンドの記事は、こう推測する。

「仏政府との攻防を経て、日産はルノー株式を現在の15%から25%以上に買い増すと、自動的にルノーが持つ日産株式の議決権が停止される権利を持っている」。ルノー株の買い増しだ。ゴーン氏がいなくなった日産取締役会ならば通りそうだ。

あるいは、「だが、もっと確実に日産の地盤を固められる方策もある。「アライアンスで失った信頼は、アライアンスで取り返すという手段もある」(日産幹部)。例えば、戦略パートナーである中国・東風汽車や三菱自動車などの出資を仰ぐことで、ルノーが保有する日産株式のダイリューション(希薄化)を図れば、ルノー支配を排除できる一つの有効手段となるはずだ」。あり得ない話ではない。