ルノー、日産合併計画が西川クーデタを引き起こした

衝撃的だったカルロス・ゴーン氏の逮捕。世界2位の自動車グループ「ルノー・日産自・三菱自連合」はどうなるのだろうか。「ミニ・ゴーン」と称されたという西川(さいかわ)廣人・日産社長はゴーン逮捕を先導し、解任へと踏み切るのだから、当然、3社連合の行方にもプランを描いているだろう。西川社長の立場から推理してみたい。

西川氏は65歳。東大経済学部を卒業し、1977年日産に入社。欧州日産、購買企画部部長などを経て、2005年副社長、15年副会長から17年4月に、ゴーン氏から社長、CEOの座を譲り受けた(日産)。

ゴーン氏が推し進めた「日産リバイバルプラン」にも協力し、ゴーン氏の最も忠実な側近の一人と思われていた。昨年、ゴーン氏から日産の経営のバトンを渡されたときも二人は暖かな関係にあった(フィナンシヤル・タイムズ)。

その西川社長が、報酬額の虚偽を東京地検に持ち込み、記者会見で「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」と非難するまで関係が決裂したのは、ゴーン氏が日産とルノーの合併を計画したからだと上記フィナンシャル・タイムズ(21日付け)は伝える。以下、同紙の報道だ。

「ゴーン氏は逮捕前にルノーと日産の合併を計画し、日本の取締役は阻止する方法を探していた」
「取締役会の何人かは数カ月のうちに議案がかけられると予想していた」
「合併の提案の準備を進めるうちに、ゴーンー西川の間で緊張が高まり、暖かだった関係は気まづくなっていった」
「ゴーン氏と最近まで会っていた人は、彼は捜査が自分の身に迫っているとは気付いていないようだったと言う」

ルノー・日産の合併話は、今年、ゴーン氏のルノー取締役の任期が来るのも絡んで取り沙汰されていた。ルノー株を15%保有するフランス政府は、両社の合併を望んでいたが、ゴーン氏はこれをはねつけていた。

ゴーン氏の心変わり

ところが、大株主のフランス政府は、ルノーの役員選任に影響力を持つことから、マクロン大統領は、ゴーン氏にゆさぶりをかけたようだ。「ルノーCEOの任期を2022年までに延長する代わりに次の3つの条件を突きつけた」と言うのだ(現代ビジネス)。

3つの条件とは、
① ルノーと日産の関係を後戻りできない不可逆的なものにする
② 後継者を育てる
③ ルノーの現在の中期経営計画を達成させる

といった内容だった。「後戻りできない不可逆的」という条件が合併に相当することになるのだろう。ゴーン氏はこの条件を呑んでルノーCEO職に再任されたという。

これはいつごろのことなのだろうか。今年に入っての両社の合併にからむ出来事を時系列に並べたので、下表を基に推理すると(表は相互に矛盾するなど完全なものではなく、あくまでも参考にするものだが)、6月15日がゴーン氏のルノー役員の任期なので、それよりも前なのは確実で、おおむね3~6月ということか。

2018年のルノー、日産の合併めぐる発言、報道
1.17 ゴーン氏が仏国民議会の公聴会に出席し、「ルノーのCEOを退く
可能性」を示唆①
2 ゴーン氏が日産・ルノーの「アライアンスを後戻り不可能にする」計
画を策定すると述べる。一方で、フランス政府がルノーの株主であ
る限り、日本政府は現在よりも緊密な統合を認めないと述べる②
3.29 「ルノーと日産が合併し、統合後の新会社を上場する可能性につ
いて協議」とブルームバーグが報道②
5.14 西川社長が3社連合について「2018年度(2019年4月)以降、資本
構成の変更も含めてできるだけ早いタイミングで次世代に渡せる
仕組みにしたい」と表明③
6.15 ゴーン氏のルノー取締役の任期切れ
6.22 ゴーン氏が三菱自の株主総会で「日産と三菱自がルノーの子会社
になる可能性はゼロ」と語る④

(出所)①=ビジネス・ジャーナル (2月) ②=ブルームバーグ    ③=ビジネス・ジャーナル(6月) ④=ロイター

そこからゴーン氏が合併に向けて準備に入って、西川社長がそれを知り、食い止めようとする。今回のゴーン逮捕時のプレスリリースを読むと「内部通報を受けて、数カ月間にわたり、~~内部調査を行ってまいりました」とあるので、時間的な流れは符合する。

6月の三菱自の株主総会でゴーン氏は「日産と三菱自がルノーの子会社になる可能性はゼロ」とゼロとまで言い切っているので、合併計画→西川クーデタ説に若干の疑問はある。また、西川社長も5月に資本構成変更の可能性について述べているの、3社連合のあり方を議論していたのは間違いない。その中で、押し切られそうになった西川社長が逆転を図ったのだろう。西川社長は、今後の3社連合をどうするつもりなのか。次回に。