電力需要の8割を賄える北海道の再生エネをブラックアウト検証委は活用するか

北海道地震によるブラックアウト(道全域停電)についての検証作業が始まった(朝日新聞)。国の電力広域的運営推進機関(広域機関)の第三者専門家で構成される検証委員会の初会合が21日開かれ、今後、原因究明と再発防止策の検討を行い、10月中をメドに中間報告を出す(広域機関資料)。

ブラックアウトの根本的な原因は、地震でダウンした苫東厚真火力発電所(165万kw)に電源を集中しすぎたためだが、検証委員会では、電力運用の巧拙も当然検証の対象になるはずだ。ある程度の大規模停電はやむを得なかったにしても全域は回避できなかったのか等々、プロの目が検証してくれるだろう。

そして、委員会にぜひ期待したいのは、分散電源、再生エネルギーの可能性だ。6日のブログにもそのことには触れたが(Kobaちゃんの硬派ニュース)、こんな指摘もあるからだ。

「大手エネルギー企業の関係者によれば、水力、風力、地熱、太陽光と再生エネルギー発電が盛んな北海道では他地域よりも分散電源に移行しやすいという。仮に早期に移行できていたら「少なくとも全域停電は回避できた」。そのためには再エネ発電所を系統に接続する電線の設置が必要になるが、北電はその費用を捻出しようとしてこなかった。」(週刊エコノミスト9月25日号)。

「北海道は再生エネルギー発電が盛ん」とあるので、調べてみたら、その通りの資料がネットで見つかった。北海道庁が昨年11月に出したものだ。

3ページ目の「北海道における新エネ導入実績(発電)」を見ると、太陽光(97.3万kw)、風力(32.1万kw)、中小水力(83.3万kw)、廃棄物(24.3万kw)など合計で244.9万kw)に達する。平成27年度実績とあるので、もう少し増えているだろう。

北海道の地震時の電力需要が310万kw(地震発生時は380kwと報道されていたが、ピーク電力?)だから、8割カバーする供給力だ。もっとも地震が発生したのは、午前3時過ぎだから太陽光は役に立たない。

週刊エコノミストが指摘する、「そのためには再エネ発電所を系統に接続する電線の設置が必要になるが、北電はその費用を捻出しようとしてこなかった。」の部分も、それを推測させるデータが17㌻に出てくる。

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希望量とのギャップが大きすぎる北電

「北海道電力の接続可能量」の表によると、太陽光発電は、系統への接続希望量が「254.2万kw」に対し、接続可能量は「117万kw」、風力発電に至っては、希望量「298万kw以上」に対し、「36万kw」しかない。風力発電の希望量が3ページの導入実績の数字に比べはるかに大きいのは疑問だが、この数字を見ると、北電の意思は伝わってくる。

分散電源を嫌う北電の直近の事情を週刊エコノミストは、こう伝える。

「電力政策に詳しい橘川武郎・東京理科大学大学院教授は、「北電には泊原発再稼働で全ての問題は解決するというもくろみがあり、コストのかかる分散電源よりも苫東厚真への高依存を選んだ」と指摘する。北電経営陣には原発畑出身者が多く、再稼働への執着は他の電力会社よりも強いという。他の電力会社が原発の早期再稼働のため一部の主力機に絞って再稼働申請していたのに対し、北電は泊1~3号機の全てで申請した」。

再生エネルギーを電力系統に接続するのを嫌がるのは電力業界のDNAのようなものだが、検証委員会の第三者の専門家たちは、再生エネルギーをどう位置付けるのだろう。北海道では重要な電力源になりうるから、ブラックアウトの再発防止策を検討するときに無視はできないと思うのだが。泊原発の再稼働も視野に入るだろう。あるいは、どちらにも触れずじまいか。