コロナワクチン 国内接種までの4つのチェックポイント

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 国民が待ち望んでいる新型コロナウイルスのワクチン接種は、いつから始まるのか。先日、厚労省は、米製薬大手、ファイザーとの間で、来年(2021年)6月末までに6000万人分のワクチンの供給を受けることを基本合意した(厚労省)。政府は、英製薬大手、アストラゼネカ、米バイオ企業、モデルナともワクチンの供給交渉を進めており(毎日新聞)、各社の開発状況、供給のメドなどをまとめた。

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ワクチン接種までの4つのチェックポイント

 ファイザーをはじめ、各社開発のワクチンが、日本での接種に至るまでには、思いつくところで、次の4つのチェックポイントがある。
 ①最終段階(第3相=フェーズ3)試験の成功
 ②米食品医薬品局(FDA)など海外規制当局の承認
 ③日本の厚労省の承認
 ④供給体制の整備(薬瓶が不足しているらしい)

 まず、ファイザーを例に4つのチェックポイントを見ていこう。

 ファイザーのワクチンは、独バイオ医薬ベンチャーのBioNTech(ビオンテック※)との共同開発だ。BNT162b2と呼ぶワクチンで、120人近くを対象とした第2相試験では、抗体が得られ、副作用は、発熱、疲労、悪寒は軽度、中等度で、1~2日間で済む一過性だったという(ファイザーニュースリリース)。

※正式社名は、「バイオファーマシューティカル・ニュー・テクノロジーズ」

年末までに最大5000万人分供給

 ワクチン治験の最終段階である第3相試験は、7月終わりからすでに始まっている。米国の39州、アルゼンチン、ブラジル、ドイツを含む世界中の約120の施設で治験する予定で、18~85歳の3万人が対象となる(同上)。

 両社は早ければ10月に緊急使用許可あるいは何らかの薬事承認を得る申請を行う予定で、許可または承認が得られた場合、2020年末までに最大1億回分、2021年末までに約13億回分を世界で供給することを目指すという(同上)。1人2回接種が必要なので、1億回分は5000万人分だ。

 第3相試験は、新薬開発では、2〜3年かかるが、8~10月の3カ月で終わらせるという超スピードぶりだ。ビオンテックのウグル・サヒンCEOが7月8日付のウォールストリート・ジャーナル(以下、WSJ)とのインタビューでは、「年末までに当局に承認申請する準備ができる」と語っているが、その後、承認申請のメドが立ったのだろうか。
  
 治験も第1相、2相と、問題なかったのだから、最終段階のハードルもうまくクリアできるはずだと思いたくなるが、結果が出るまでは楽観できないようだ。WSJ紙のヘルスケア担当の記者は、「ワクチンの有効性や副作用が許容範囲かどうかなど、鍵を握る疑問の答えが出るのは、さらに大規模な試験データが手に入る今秋以降だ。医薬品開発では、初期の治験で隠れていた問題が後に表面化することも珍しくない」と書いている(「コロナ関連株投資、ワクチン期待なら大損覚悟で」、7月22日付)。

米FDAもスピード審査か

 続く、②の米国など海外当局の承認のチェックポイントだが、米FDAなどは、ワクチン承認の可否を決定するためにすべてのデータをチェックするが、それには、通常ならば数カ月から1年を要するという(Wired)。10月に申請できたとしても、十分な効果と安全性が確認されたとしても、承認は早くて2月ごろだ。ファイザーとビオンテックが目標とする、「年末までに5000万人分を供給」はありえない。

 ただ、これも第3相試験で好結果が出れば、超スピードで手続きを進めるのではないか。とは言っても、承認の条件はあるわけで、米FDAのトップは、6月30日の米上院公聴会で明らかにしている。それは、プラセボ(偽薬)を50%以上上回る予防効果がある(※)、▽どれだけの抗体があれば感染を防止できるか不明なので、抗体が作られただけでは承認しない、▽接種後1年間の追跡調査の義務付け--などをあげた(WSJ、「米FDA、新型コロナワクチン承認の指針を発表」)。
※プラセボ云々とは、新薬の治験では、対象者の半分はワクチン、残り半分は塩水など偽薬を注射し、2グループの結果を比較することになっており、ワクチングループの効果が偽薬グループを50%以上上回るという条件だ。

厚労省は、特例承認でスピード審査か

 米当局の承認を受け、次のチェックポイントの厚労省は、どう判断するのか。厚労省は5月に、米ギリアド・サイエンシズのレムデシビルを承認申請があってからわずか3日後の7日に特例承認したことがある。

 特例承認とは、疫病のまん延防止のため緊急使用が求められ、英、米、カナダ、独、仏で販売が認められている医薬品に適用される制度だ(医薬品医療機器等法14条)。

 レムデシビルは、もともとエボラ出血熱の治療薬として米国で販売されており、米当局は、5月1日に新型コロナ治療薬としても緊急使用を認めていたから、特例承認の対象となった。上記5カ国で今後販売される新型コロナワクチンも、この制度の適用が法的に可能なので、厚労省も手続きにあまり時間をかけないはずだ(日経バイオテク)。

 ただ、レムデシビルのような既存薬は、時間をかけて副作用を確認しているのが、ワクチンは、新登場なので、安全性に不安は残る。

トラブル起きれば、ベタ遅れ

 最後のチェックポイントである④供給体制の整備。
晴れて、有効性があり、安全性の高いワクチンの開発に成功しても、
順調に生産できなければ、宝の持ち腐れだ。原料の確保、大量生産できる工場の確保、大量輸送する手段、厳しい警備や温度管理できる物流網の準備が必要になってくる。

 ファイザーのグローバルサプライ部門幹部、パメラ・シウィク氏は「日々、通常なら数年かかるところを数カ月、数カ月かかることを数日でやろうとしている」と話す(WSJ「コロナワクチン開発、背後で進むもう1つの戦い」7月31日)。
 
 ワクチンを詰める薬瓶が不足しているそうだ。医療用ガラスは、コロナのパンデミック以前から品薄状態にあった。中国が医薬品を容器に長期保管することを義務づけ始めたことが要因で、供給不足はさらに深刻化しているという。米政府は6月、コロナワクチン向けの薬瓶製造に向け、光ファイバー・液晶用ガラス基板大手のコーニングに対し、2億400万ドルを拠出している。

 WSJ紙は、さらに、輸送上の心配なポイントを指摘する。
 ペンシルベニア州立大学で供給網管理について教えるマーク・カポファリ氏は「嵐で飛行機が飛ばなかったり、輸送トラックが事故を起こしたりすることがある」と話す。「その際、冷蔵保存状態に戻すためにどのような対策を準備しているだろうか?」

 またラトガース大経営大学院のウィリアム・マクローリー准教授(供給網管理)は、製薬会社は「高額な医薬品を狙う犯罪集団に対する警備も必要」だと指摘する。

国は供給時期の開示が必須

 こうして見てくると、ファイザーからのワクチンの供給時期は、2021年初めを期待していると、ガッカリで終わりそうだ。「供給開始は早くて来春」ぐらいに思っておけば、落胆しないで済むだろうか。

 厚労省は、具体的な情報を以て、供給開始時期の見当をつけているだろうから、ファイザーが承認申請をする前後には、政府は展望を示してもらいたい。経済活動、社会活動の今後の予定を立てる上でも、必須の情報なのだから。東京オリンピック、パラリンピックの開催もワクチン供給に左右される。

「9月に大量生産」との報道も

 政府が交渉している残り2社についても見ていこう。オックスフォード大学とアストラゼネカが先行している。日本への供給時期について、ファイザーの「早くて来春」という見立てよりも早まるだろうか。次回は、この組み合わせをもっと調べてみる。

 オックスフォード大学とアストラゼネカが開発しているワクチンは、初期の治験で結果が良好で、最も実用化に近いとみられ、早ければ、9月に大量生産が始まる可能性があると、WSJは伝えている(「英大学開発のコロナワクチン、治験で好結果 早期実用化に期待」7月21日)。もし、この報道が正しければ、日本でも、来年早々に接種が可能になるのではないか。
 

 治験は、1077人の健康な成人を対象に実施され、新型コロナに対する効果を示唆する2種類の抗体反応がみられたという。副作用は、約70%が倦怠感を、68%が頭痛を感じたり、筋肉痛や悪寒、発熱感などがあったというが深刻な症状ではなかったという。

 すでに、第3相試験を英国、ブラジル、南アフリカで実施しており、8月からは、米国で3万人規模の試験を始める。
 
 保健医療分野で働く人々向けの緊急対応として今年秋にも接種が可能になり、来年中に本格生産に入れる見通しだという。

無名のモデルナ 2021年から供給

 政府交渉先のもう1社、モデルナは、今年初めには米国でも無名の存在だった。2010年に医薬品ベンチャーとして設立され、遺伝子情報を運ぶメッセンジャーRNA(mRNA)を利用した医薬品の開発に注力してきた(WSJ「コロナワクチン開発、意外な先行企業モデルナとは」7月2日)。ファイザー、ビオンテックもmRNA利用のワクチンだ。

 CEOのバンセル氏は今年1月初旬、中国で広がっている謎のウイルスに関するニュースを知り、米国立衛生研究所(NIH)のワクチン研究者に、ワクチン候補に関して連携しようという内容のメールを送ったという。

 これが両者の協力につながった。NIHは、3カ月というかつてない速いペースでワクチンの設計図づくりから臨床試験(治験)までに進むという、野心的な目標を設定した。

 mRNAを利用したモデルナの技術が可能にした目標だった。ウイルス培養などに時間がかかる従来の開発法より、はるかに迅速に設計、生産ができる。

 第1段階の治験で有効な暫定結果が出たのを受け、5月には600人を対象に第2段階の治験を始め、第3相を7月から米国89カ所、3万人を対象に実施する。

 実際にワクチンを供給するのは、2021年からで、年5億回〜最大10億回分を届けるという(MITテクノロジーレビュー)。

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