新型コロナウイルス 医師が語る重症度と感染力 治療薬の見通し

 新型コロナウイルスについて、毎日、山のように情報が流れてきますが、重症化、感染力についての医師たちの見方と治療薬に絞ってまとめてみました。

目次

「8割軽症、2割重症」

感染力はインフル並み、インフル以下?

治療薬はいつ出てくる

  ・アビガン  有効ならば、投与速い 

  ・カレトラ  中国では有効性確認されず

  ・レムデシビル  WHO期待だが、日本投与に時間

「8割軽症、2割重症」

「感染しても全体の8割は軽症で、無症状の人もいる」。新型コロナウイルスの性質を東北大学大学院の押谷仁教授は、そう評価する。押谷教授は、政府専門家会議のメンバーだ。
「多くの人は重症化しません。高齢者は致死率が高いのですが(中国では80代以上で14.8%)、重症化した時点で多くの人にウイルス性肺炎が見られます。これにより、肺の多くの部分が機能しなくなります」(Yahoo!ニュース、取材は2月23日)。

(出所)国立循環器病研究センター

 新型コロナは、のどから上の上気道とその下の下気道(気管支、肺)の両方で繁殖する。季節性インフルエンザは、上気道だけなので肺炎にまで進出しない。ただし、インフルで体力が弱ったことで細菌性肺炎が起きやすくなる。

 新型コロナは、上気道で繁殖を食い止められれば軽症で治癒する。

 公衆衛生や産業保健学、感染症が専門の国際医療福祉大学の和田耕治教授は、「8割」の内訳を説明してくれている(Buzzfeed、2月27日取材)。

「「8割が軽症」と言われますが、5割は無症状です。「軽症」と一括りにしていますが、3割は「入院が必要ないレベル(の軽症)」ということです。38度ぐらいの熱も出るし、だるさもある。これが人によっては1週間ぐらい続く」

「残りの2割は重症で入院が必要になるレベルの症状です。さらに、全体の5%は人工呼吸器が必要になるほど悪化します」

 二人の医師の話からは、肺炎になる確率が高いので、インフルよりも重そうに思えるが、東京都医師会が2月13日に出した、「都民の皆様へのお願い」という通知には、「重症度は、通常のインフルエンザなどと同程度と予想されます(例年のインフルエンザでも高齢者や免疫力の低下した方など重症化し死亡する場合が一定数みられます)」とあった。インフルで直接、毎年2,3千人が命を落としているので、確かにそう言ってもおかしくない気もする。

 これまでの死亡率を確認しておこう。感染者数が圧倒的に多い中国では、3月1日時点で、死亡率3.6%(感染者数7万9968人、死者数2873人)だから、インフルエンザに比べるとかなり高い(※)。ただ、発生地・武漢と他の地域ではかなり様相が違う。そこで、武漢のある湖北省を除くと、死亡率は0.9%(感染者数1万3061人、死者数112人)とグンと下がる。

※2009年新型インフルエンザは、国内で1年間で約2000万人が感染、死者は203人(厚生労働省Q5)。ただし、これは、インフルエンザで直接亡くなった数だろう。インフルエンザから肺炎になり死亡した人などを含めた「超過死亡」では、約1万人と推計されている(厚生労働省 新型インフルエンザに関するQ&AのQ10)。

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 感染力はインフル並み、インフル以下?

 重症化しない人が多いのはいいことだが、軽症や無症状の人が自覚のないまま、人にうつしてしまうので、感染が拡大しやすく「非常に厄介な性質」(押谷教授)なのだ。

 さらに、「感染してから発症するまでの潜伏期間も多くは5、6日間ですが、もっと長い人もいる。軽症者や、感染しても症状のない人、さらに潜伏期間内の人でも、周囲に感染させている可能性があり、感染連鎖が見つけにくい」(押谷教授)。これは、インフルと違うところ。

 ただ、インフルエンザほど感染力は強くないとの見方もある。前出の東京都医師会の通知には、「感染力はインフルエンザと同程度かそれより弱いと言われています」とある。

 また、沖縄県立中部病院医師の高山義浩氏も、フェイスブックに「良い情報もあります。これまでの積極的疫学調査(感染者の接触者を追跡する調査)の結果をみると、このウイルスの感染力は必ずしも強くはありません。少なくとも、インフルエンザほどは強くない」(2月26日)と書いている。

 高山医師は、2009年新型インフルの時、厚生労働省の新型インフルエンザ対策推進担当官だった。高山医師は、さらにこう書いている。
「電車やレストランなどで空間を共にしたぐらいでは感染していません(市中で空気感染はしない!)。咳やくしゃみによって生じる飛沫を吸い込むことでも感染しますが、それすらも限定的な印象があります(飛沫感染はするが限定的か?)。ただし、密閉された空間に有症者と長時間いると感染するリスクが高まってくるでしょう」。

 ドアノブや手すりは要注意、立食パーティーはハイリスクなどと具体例をあげているが、安倍首相の指示で、中止をやむなくされた卒業式については、「そんなに皆さんが触りあうわけではありませんね。不特定多数でもありませんし、有症者を休ませることも難しくないはず。ですから、開催自体は問題はないと思います」とOKサインを出していた。

 一方、前出の和田教授は、SARSのときのように封じ込めは、「短期的には無理」だとし、すでに「感染者数は、少なく見積もっても(世界で)数十万人」と見ている。数十万人のかなりの部分を中国が占めるイメージだとは思うが、日本も万単位は覚悟した方がいいのだろう。

 感染者数はいまだ228人(3月1日、NHK調べ)だが、PCR検査が1日1000件(テレビ朝日)と少ないせいだろう。検査能力の高い韓国のように検査数が増えれば数字も上がっていくだろう。

治療薬はいつ出てくる

 患者増が不可避の中、登場を待ち焦がれているのが治療薬だ。現在、アビガン(抗インフル)、カレトラ(抗HIV)、レムデシビル(抗デボラ出血熱)の三つの薬が一部の医療機関での使用が始まっている(官邸HP)。 このパートは、下記の記事を元にまとめた。

Yahooニュース! 忽那賢志医師 ▽日経ビジネス

 ▽日経バイオテク ▽読売新聞

 ウイルスには抗菌薬(抗生物質)は効かない。ウイルスごとに薬を開発しなければならない。インフルにはタミフル、リレンザなどがあるが、新型コロナにはもちろんない。

 新薬の開発を待っているわけにはいかないから、インフルやエイズ治療薬を流用して試している。と言っても、全く根拠がないわけではなく、SARSなどで服用の結果がよかった薬が選ばれている。

アビガン 有効ならば、投与速い

 国内で一番期待されているのはアビガン(薬剤名ファビピラビル)だろうか。富士フイルム富山化学が開発したインフルエンザ薬。2014年に製造・販売の承認(備蓄専用)を得ており、200万人分の備蓄があるので、効果が確認されれば、患者への投与に時間はかからないだろう。

 新型コロナには実験室レベルで一定の阻害作用が確認されている。臨床現場でも、中国で新型コロナウイルスへの効果が確認されているという。国内で、医療機関での投与がすでに始まっている。経過を素早く伝えてもらいたい。

カレトラ 中国では有効性確認されず

 カレトラは、本ブログでも一度紹介したことがあるが、治療現場でSARSに効果が見られた。中国では、1月から使用されていたが、残念ながら、有効性は確認されなかった。

レムデシビル WHO期待だが、日本投与に時間

 レムデシビルは、米製薬大手のギリアド・サイエンシズが開発したエボラ出血熱の治療薬。エボラ出血熱に試験的に投与されたが、期待通りの効果は得られなかった。しかし、新型コロナには、武漢ウイルス研究所が医学誌「Cell Research」にレムデシビルの効果に関する報告を発表した。

 培養細胞に新型コロナウイルスを感染させ、48時間後のウイルス増殖の抑制効果を見たところ、レムデシビルで高い阻害効果が観察されたという。

 中国を視察した世界保健機関(WHO)の担当者が1月24日、レムデシビルに対し「現時点で本当に治療効果があるとみられる唯一の薬」と発言している。

 中国では、中日友好医院が主導して、治験が進められている。「2020年4月に結果が得られる予定」(ギリアド社のリリース)という。

 国内でも国立国際医療研究センターを中心に3月からレムデシビルの国際共同医師主導治験が開始される。

 ただ、レムデシビルは国内で承認されてないので、患者に届くには時間がかかりそうだ。特例扱いしても最短で年内の承認とみられている。

 政府は、新型コロナと診断されても治療薬がないので、処方のしようがない。だから、多少の熱が出てもPCR検査をせずに自宅療養を勧めている。しかし、治療薬が登場すれば、早く検査で感染を見つけ、薬を処方すれば重症化を防げる。陽性・陰性検査は、必須になってくるだろう。

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