患者数2000万人新型インフルの体験に学ぶ 「新型」に弱い人類

 新型コロナウイルスの感染はどこまで広がるのかを考える材料として、2009年に世界的に流行した新型インフルエンザのことを調べてみた。感染者数の多さに驚いた。推計約2000万人(下図=厚労省「令和元年度インフルエンザQ&A」のQ5)。

 自分が無知のせいかと心配になって、当時の会社の先輩に聞いたら、やはり知らなかった。あまり知られてないと思い、アップした。

 新型インフルを調べたのは、もうひとつ理由があって、実は、当方も2000万人の1人だったからだ。何か参考になるものが引っかかってくるかもしれないと、振り返ってみたくなった。それにしても、そんなにお仲間がいたとは知らなかった。

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1.「新型」は人類に「強毒」の可能性

 新型ウイルスも発生当時は、ずいぶん騒いだ。未知のものには人は強い警戒感を示す。いまだに「黒船」が警戒感を表すワードとして通用するほどだ。ただ、ウイルスの場合、「新型」が恐怖なのは根拠がある。

 人間にとって初対面のウイルスは強毒だからだ。だから、コウモリや鳥、豚などほかの動物から種を超えて感染するようになったウイルスや人に初めて感染するウイルス感染症は、非常に致死率が高い場合がある(東京医科歯科大学、清水則夫氏「インフルエンザってそんなに怖いの?」。なぜ初対面に弱いのかまでは書いてなかった。免疫の関係だろうか)。

 2009年新型インフルの時も、NHKが海外にまで取材に行って特集番組を放映したのを覚えている。ちなみに最初の発生地はメキシコだった。

2.2009年新型インフルは致死率0.1%

 しかし、流行が終わってみれば、致死率0.1%以下で、「弱毒型軽度」に分類されている(下記表、上記清水氏のレポート64枚目)。日本でも、入院患者数は約1.8万人、死者は203人だった(2009年5月の国内発生から1年余)。

 2009新型インフルは、夏の間にも感染が拡大したが、翌2010年には、「時期外れ感染」は見られなかった。こうしたことから、厚労省は、2011年3月31日の時点で、2009新型インフルエンザは、季節性インフルエンザとして取り扱うようになり、対応も季節性インフルエンザの対策に移行した(前出の厚労省Q&A)。

 2009新型インフルは、A型H1N1で、過去に流行したスペインかぜやソ連かぜと同型のようだ。純粋な「新型」ではなかったから、弱毒型軽度で済んだのだろうか。ならば、今回の新型コロナウイルスはどれほど純粋度が高いのか?

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3.先進国でも優等生の対応だった日本

 ちなみに流行時の日本は対応が良かったのだろう、死亡率0.16%と先進国の中で最も優れていた。米国は3.96%で1万2000人が亡くなっている(下図=国立感染症研究所の岡部信彦氏レポート5枚目。米国は、死亡者の基準が違うので表にしか載せていない)。

4.米国1万4千人死者に新型コロナウイルス患者?

 今シーズン米国では、インフルで1万4000人が亡くなっているという(CNN)。今年が異常なわけではなく、毎年、死者は1万人を超えるといい、2017~18年には6万1000人も亡くなっている(東洋経済オンライン)。これも驚きの数字だ。国民皆保険が整備されている日本とは違う米国特有の医療事情のせいもあるのだろう。

死者1万人超「米国インフル猛威」は新型コロナかもしれない」なんて記事も出ている。しかも筆者はお医者さんなのだが、東洋経済オンラインの記事を読んでいるので、「そうかな~」と疑ってしまう(※)。素人が疑問を持つのはおこがましいが。米国では、新型コロナの検査を拡大したそうだから、いずれ結果がおいおい出てくるだろう。

※国立国際医療研究センター勤務の感染症専門医、忽那賢志氏がやはりこの記事に疑問を呈していた(「アメリカのインフルは新型コロナだった説」は本当か?)。ファクトを知っていれば、飛ばし気味の情報に惑わされないことを改めて、確認できた。

 以前に書いた記事でも、当方の見解が見当外れでないことを忽那氏の記事を読んで確認できたことがあった(「新型肺炎の致死率は1%程度の可能性も お役立ちサイト紹介」)。

5.新型インフル体験記

 最後に、当方の2009新型インフル感染の体験を書いておこう。50代半ばの時だ。

 その時の手帳を引っ張り出して見ると、体に変調を感じたのは2009年8月9日。日曜の夜、37.6度の熱が出た。たぶん、熱っぽかったので体温測定したのだろう。翌10日の午後、地元の病院に行って、新型インフルと診断された。

 検査は、鼻だったか、のどだったか、記憶があいまいなのだが、綿棒のようなものを差し込むものだった。結果が出るまでそれほど時間はかからなかった。国内で患者が発生したのが5月上旬。当方が感染した8月には、簡易検査はすでに浸透していたということだ。今回の新型コロナウイルスでも、同様のペースで検査できるようになるのだろうか。クルーズ船への対応を見ると不安になる。

 陽性と判定され、表の玄関から出ないように言われ、救急車が出入りする裏口から出た。会計も診療室付近で済ませた。「感染者なんだなー」と実感させられ、徒歩で帰るとき、人に感染させないよう、「スーパーなどの人混みは避けなきゃ」と軽い疎外感がよぎったのを覚えている。熱は38.1度と手帳に記されている。

 幸い、10日から1週間夏休みだった。その間、自分の部屋にほぼ閉じこもり、横になって本を読んだりした。山本一力の小説を面白く読ませてもらい、気がまぎれたのを覚えている。

 処方はタミフルを14日まで5日間服用した。服用翌日の11日火曜日には36度台の平熱に戻り、以降、上がることはなかった。体もだるくて辛いこともなく、ほぼ平常だった。

 届けが必要なのか、地元の保健所に問い合わせたが、不要とのこと、発症から5日だったか経ったならば平常通りに生活しても構わないとの答えだった。それで、翌週17日から出勤した。「全然、大したことなかったな」が治癒した後の感想だった。

 会社で、「新型インフルにかかった」と言ったら、「エーッ」と驚かれた。だから、多分、あちこちに感染者がいるという状況ではなかったのだろう。

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