目次
木曜日ごとの感染者数を比較
英国 不可解な患者急増の地域
ポルトガルもロックダウン
日本はまだ拡大していない
新型コロナの感染拡大第3波は、感染者が少しずつ減っている。「爆発的感染拡大は避けられるのでは」と楽観したくなる。しかし、英国など欧州では、いったん収まりつつある状況が変異種のせいで一変した。グラフを交えまとめてみた。
木曜日ごとの感染者数を比較
まず、日本の1月の感染状況を見てみよう。PCR検査数が多い木曜日ごとに、新規感染者(陽性者)数を比較すると、1月7日=7568人、14日=6605人、21日=5651人と明らかに減り続けている(図1)。東京都も2447人、1502人、1471人と同じ傾向だ(NHK特設サイト)。
11都府県に発令中の緊急事態宣言の効果だろう。次の木曜日の28日に4000人台前半にまで減れば、減少トレンドが続くと思えてくる。ただ、いまのトレンドは、既存種のコロナウイルスの感染を反映したもので、英国型、南ア型の変異種はほとんどないと見られている。
英国 不可解な患者急増の地域
英国などの例を見ると、変異種の感染拡大の波は既存種とはまったく別に襲ってくるようだ。つまり、既存種が収まっても、変異種は新しい波を作り出す。
英国の推移を見ると、新規感染者は、昨年11月12日の3万3470人をピークに減り始め、いったんは1万1000、1万2000人あたりまでダウンした(図2)。ところが、12月半ばぐらいから再び増加に転じ、年明けには3回目のロックダウン(都市封鎖)に追い込まれた(東京新聞)。
11月下旬頃までには国内大半の地域で新型コロナをほぼ封じ込めていたのだが、不可解なことに英南東部のある地域では感染者が急増していたのだ。
ソーシャルディスタンスなど適切な感染対策を取らなかったり、違法なホームパーティーなどでクラスターが発生した訳ではなかった。疫学者らが調べた結果、感染拡大の中心地からほど近いケント州で患者の検体から変異種が見つかった。その時には、すでにロンドンの感染者の62%が変異種による感染だったという(ウォールストリート・ジャーナル)。
ポルトガルもロックダウン
さらに、ポルトガルでは、英国に2週間ほどの後ずれで同じことが起きている(図3)。新規感染のうち約20%が英国型の変異種で、その割合は来週にも60%に達する可能性があるとテミド保健相は警告するとともに、感染者数の増加に「医療は対処できない」と匙を投げている状態だ。同国は、15日間のロックダウンに入っている(ロイター)。
日本はまだ拡大していない
日本はどうなのか。英国変異種ウイルスは、日本では、22日に東京都内の10歳未満の女児から見つかったとの発表があった。海外に滞在歴がなく、入国者との接触も確認されていないので、市中感染の疑いが濃厚だ。ただ、まだ広がってないらしい。
その根拠は、変異種が見つかったのは、陽性で変異種用のPCR検査を実施した都内1453人分の検体のうち、この女の子だけだったからだ。厚労省の判断は「市中感染の可能性はあるが、面的な広がりはない」ということだ(朝日新聞)。
英国からの帰国者を含め国内で変異種の感染者は50人が確認されている。既存種の第3波の行方もまだまだ楽観できる状況ではないが、加えて、変異種の感染拡大も脅威だ。