大和総研VS IMF① どっちが正しい 貿易紛争のインパクト

スポンサーリンク

米国発の関税引き上げ合戦が世界の経済に与える影響については、大きな影響がないというのが大方のエコノミストたちの見方だった。しかし、IMFの試算では、影響度が意外に大きい。そのギャップの原因について大和総研が丁寧に説明したレポートを出している。

7月20日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の際、IMFのラガルド専務理事が「貿易制限によって世界の生産(GDP)を0.5%下押しするとの見方」を示したという記事(ロイター)を読んで、「ちょっと数字が大きいな」と気になっていたのだが、大和総研によると、試算の前提が違っているだけなのだそうだ。

前提の違いは二つあった。

ひとつは、「関税等による貿易価格の上昇率」の見通しの違いである。IMFは、4月と10月の年2回、「世界経済見通し(Economic Outlook)」を出しているが、2016年10月に出した「アウトルック」では、保護主義への警鐘を鳴らしている。

この年の6月に英国で国民投票の結果、EU離脱(Brexit)が決まり、11月には米国の大統領選挙を控え、トランプ候補が、保護主義の言動で人気を高めていた時期だ。

IMFは、「関税等で貿易価格が10%(引用者強調)上昇すると、国際貿易は、5年後に15%、より長期では16%下押しされる。世界生産と消費は、5年後に1.75%、より長期では2%低下する」と試算しているという。

「世界生産と消費」とは、要するにGDP(国内総生産)を指すと見ていいだろうが、「5年後に1.75%」落ち込んでしまう。一方の大和総研は、0.05%程度の落ち込みという見通しで、ずいぶんと差がある(レポートには、中米日のGDPへの影響を分析しているが、世界経済への影響については、数字が明示されていない。ただ、IMFの試算でも、貿易コストの上昇率を0.26%(後述)とすれば、世界経済への影響は0.05%で、「これは前項で提示した大和総研試算と、ほぼ同値である。」とあるので、0.05%を使った)。

スポンサーリンク

IMFの前提は非現実的

しかし、このギャップの原因ははっきりしている。キモは、IMFの「関税等で貿易価格が10%上昇」の部分である。実は、大和総研は、貿易価格の上昇率を0.26%と見ている。そもそもの前提が40倍も違うのだ。

40倍の違いというのは、たとえて言えば、輸出企業の決算見通しで、為替レートの前提を、1ドル=110円と置くか、1ドル=80円と置くかぐらいの違いがあるのだろうか。

大和総研がなぜ、0.26%を前提としたのかは書かれていない。ただ、大和総研が、世界のGDP0.05%程度の落ち込みという場合に想定している関税の引き上げの対象となるのは、次の範囲である。

「米国が中国に対して2500億ドルに相当する輸入品目に対して関税(500 億ドルに対して25%、2000 億ドルに対して10%)を課し、同時に中国が米国に対して500 億ドルに相当する輸入品目に対して25%の関税を課した場合」

この範囲が貿易価格の上昇0.26%に相当するということなのだろう。それが、10%上昇となるには、どれだけの追加関税が必要になるのか見当がつかないが、40倍も違うのだから、相当広範囲の貿易製品に、50%とか60%の追加関税率を発動しないと達しない数字なのではないか。まさか、そこまで貿易紛争がエスカレートするとも思えない。大和総研レポートは、上昇率10%を「非現実的なまでに高い数値」と表現している。

貿易、投資の自由化を標榜するIMFのポジション・トークであり、保護主義に警鐘を鳴らそうとするあまり、つい下駄を履かせたと見るのが妥当だろうか。

ちなみに、0.26%上昇で試算すると、世界経済に与える影響は、IMFも大和総研と同じ0.05%程度に収まるそうだ。

次回は、もうひとつの前提の違いについて書きます。

スポンサーリンク

シェアする

フォローする