米中対立① ペンス演説は、米ソ冷戦を告げた「鉄のカーテン」演説だった

貿易紛争の激化でとげとげしくなっている米中関係だが、さらに、ここのところ中国を刺激するホワイトハウス首脳のスピーチや決定が重なり、緊張度が増している。中国共産党の英字紙は「米中冷戦が始まった」との見方を紹介している。しかし、その一方で、冷静な対応を求めている。中国政府が恐れているのは、国内にナショナリズムの火が燃え盛ることだろう。

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中国をイラ立たせる発言

米中間は、米国がこれまで、3度にわたり総額2500億ドル相当の中国からの輸入品に追加関税をかけ、協議の見通しは立っていない。そんな中、トランプ大統領が、9月26日の国連安保理会合で、「中国が11月の米中間選挙に干渉しようとしている」と予期せぬ爆弾発言を繰り出した(Kobaちゃんの硬派ニュース)。

その直前の24日には、台湾に3億3000万ドル(約370億円)相当の戦闘機部品などを売却することを決めた(AFP)。

さらに極めつけは10月5日のペンス副大統領のハドソン研究所での演説だ。ペンス副大統領は、「中国は米国の強硬な通商政策への報復として、11月6日の中間選挙で与党共和党が敗北するよう、俳優やフロント企業、宣伝手段を用いて綿密な政治運動を展開しており「米国の民主主義に干渉している」と非難した」

また中国の南シナ海での行動にも話は及び、無謀だと非難して、同海域での海洋進出の動きをけん制した(ロイター)。

米国が強硬な通商政策を行使しているのは、中国が知的財産権を盗んだり、国内市場へのアクセスを制限し、国営企業を不当に保護しているからだとして、「中国が米国の知的財産権の窃盗や強制的な技術移転を止めないかぎり、米国は対応を続ける」と述べた。

さらに、グーグルに対して検索アプリ「ドラゴンフライ」開発の即時停止を呼び掛けた。「ドラゴンフライ」とは、グーグルが中国検索市場に再参入のため開発中の、検閲監視付き検索エンジンのことだ。先日このブログでも書いたが、グーグルが再参入を図るため、中国のネット検閲体制を受け入れることになる(Kobaちゃんの硬派ニュース)。米政府がそれにストップをかけたのだ。

習近平と会いたかったのに

中国は、こうした最近の米側からの攻勢に、そのたびに反論している。そして、北朝鮮の金正恩委員長との対談を終え、8日に北京を訪れたポンペオ米国務長官への対応も冷淡だった。

米政府は、習近平国家主席との会談を求め、ポンペオ長官の日程には書き込まれていた会談予定は実現しなかった。会談した王毅外相は、「協力が双方の唯一の正しい選択だ」と全面対決は望まない姿勢を見せながらも、「米国は対中貿易摩擦をエスカレートさせ、台湾などの問題でも中国の権益を損なう行動を取り、中国の内外政策を根拠なく非難している」と対米批判を展開。「誤った言動を直ちにやめるよう求める」と強い調子で迫ったといい、米中紛争や北朝鮮問題解決への糸口はさっぱりつかめなかったようだ(時事通信)。

日本のテレビでは、あまり紹介されていないようだが、ペンス副大統領の演説は中国にとって、強烈な印象を与えたようだ。「環球時報」(人民日報の姉妹紙)の英字紙「Global Times」は、「多くの専門家たちは、(東西冷戦の始まりを告げた)ウィンストン・チャーチルの1946年の鉄のカーテン演説を思い起こし、米中間の新たな冷戦の始まりと信じた」と伝えている。

長くなったので、次回に分けて書きます。