米中対立② 「アメリカには太極拳の精神で立ち向かえ」と党の考えを代弁

前回ブログの最後に、「ペンス副大統領演説は米中冷戦の始まり」と中国の専門家たちが見ているという「Global Times(環球時報)」の記事を紹介した(Kobaちゃんの硬派ニュース)。しかし、このGlobal Timesの記事の主張は、逆で、「冷静に対処すれば冷戦にならない」と展開していく。

記事は、「ワシントンから、敵対的なレポートや演説がどんなにあふれ出てきても、われわれは、感情的にミスリードされることなく米国を理性をもってみなければならない」と訴える。

その主張を支えているのは、世界第二位の経済大国となった自信だ。
「米国は、中国を十分に封じ込めることはできない。貿易戦争は、必ず米国にダメージを与え、馬鹿げた選択と言える。中国を標的としたNATOスタイルの体制を組むのは非現実的だ。海外に広がった中国ビジネスと国内市場の大きさを考えれば、中国を孤立させたり、封じ込めることはできない」

「反中国」を叫んでいるのは、米国の中の一部の勢力にすぎないと見る。
「ホワイトハウスと議会が米国社会で反中国キャンペーンを展開するのは難しい。国民がいわゆる国益のために喜んで身を任せる時代は遠い昔だ。中国が米国のヒステリックな政治エリートたちに冷静に対処する限り、いわゆる冷戦にはならないだろう」

そして、「太極拳」が出てくる。激することなく、あのスローでゆったりした動きを見習えということなのか。
「こんな時は、中国は、太極拳(tai chi)の精神で米国に立ち向かうべきだ。これこそ中国の独自の戦略的な知恵だ。われわれは、米国に貿易戦争の苦痛を味合わせねばならないし、南シナ海や台湾海峡での米国の無法な行動を許容するわけにはいかない。しかし、冷静に行動しなければならない」。

最後に、「中国はソ連ではないし、米国は、ソ連を扱ったように中国を扱うことはできない」と結ぶ。

環球時報は、普段は太極拳どころか激した論調なのだが、やけに冷静だ。7月に香港の英字紙『South China Morning Post』が観測筋の話として報じた「政府中央は、ナショナリズムをトーンダウンさせるよう幹部たちに明確な指示を与えている」という記事は当たりで、その指示が生きているに違いない(Kobaちゃんの硬派ニュース)。今回の記事は、政府、中国共産党の考えを代弁したものだろう。

ちなみに、「New York Times」も、「普段はやかましい(strident)Global Timesだが」という注釈付きで、Global Timesの抑制された記事を紹介している。上記で紹介した記事とは違うようだが趣旨は同じだ。

dナショナリズムの激発が怖いのだろう

尖閣諸島の領有権をめぐり2012年に起きた反日デモは、政府がたきつけた「官製」の疑いが持たれた。たとえ、そうだっったとしても、暴徒化したデモは政府の思惑を超え、ナショナリズムに火が着くとブレーキをかけられない恐怖を実感したので、今回は自制しているのかもしれない

習近平政権に不満を持つ党幹部たちもいるだろう。社会を不安定化させることで、習失脚を狙う勢力を警戒しているのかもしれない。

ここからは推測というより、想像の領域なのだが、1日に南シナ海で、中国の駆逐艦が米駆逐艦に異常接近した事態が起きた(AFP)。
トランプ大統領の「中国選挙干渉」発言や台湾に戦闘機の部品売却を決めた後の時期だけに、アメリカに反発した中国駆逐艦の艦長が独断で命じた可能性を考えた。

もし、そうだとしたら、上からのブレーキに逆らうエネルギーがたまりつつあるように思える。

米中貿易紛争は、これからも続く米中対立の一幕で、貿易紛争がほどほどのところで決着しても、それで米中円満というわけにはいかない。習近平政権は、「偉大なる中華民族の復興」と国内を鼓舞する一方で、米国には、激することのない「太極拳戦略」で対応していくつもりらしいが、齟齬をきたしそうだ。

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