国際緊急経済権限法に味を占めたトランプ  米企業に中国から撤退命令ツイート

安倍首相が韓国進出の日本企業に対し、韓国からの撤退を命令したら、多くの日本人が「この人に首相なんて任せられない」と思うだろう。ところが、トランプ大統領は、先週23日のツイートで、平然と米企業に中国からの撤退を命令した(ロイター=ツイート内容の一部は末尾に掲載)。

「米大統領はそんな強大な権限を持ってやしないだろう、馬鹿馬鹿しい。またトランプのホラか」と一笑に付すところだが、トランプ大統領は、国際緊急経済権限法(IEEPAアイーパ)により命令できると主張している。実は、トランプ大統領、このIEEPAに味を占めている。

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メキシコに対して発動しかける

というのは、トランプ大統領は、5月にメキシコに不法移民対策を取らせるためにIEEPAを発動しかけたことがある。この時は、メキシコからの全輸入品に5%の関税を課すという威嚇の根拠法令としてIEEPAを引っ張り出した。結果は、メキシコが不法移民対策に乗り出し、トランプ大統領の意の通りになった。

その時のことは、Kobaちゃんの硬派ニュースでも、IEEPAについて調べて書いた。その時の文章を引用する。

IEEPAが適用されるのは、「米国の国家安全保障、外交政策または経済に対する異例かつ重大な脅威」があった場合だ。

大統領にどんな権限が与えられているかというと、
① 外国為替取引等の規制・禁止
② 金融関連取引の規制・禁止
③ 通貨・有価証券の輸出入規制
④ 外国・外国人の在米資産の没収
⑤ 外国等の資産やその取引に関して、取得、使用、売買、輸出入、輸送等の規制(安全保障貿易情報センター=CISTEC21~22㌻)

かなり幅広い権限が認められているが、関税の項目は見当たらない。当時、対メキシコ関税の決定については専門家から疑問の声が出ていたばかりか、米商工会議所が提訴の可能性もあると伝えられていた。

ましてや、トランプ大統領の今回のツイートは、自国企業に特定国への事業進出を禁ずることに等しく、IEEPAが認めている権限からはとんでもなく逸脱していると言えそうだ。

米高官、閣僚もトランプに追従

しかし、そう思ってないのがトランプ大統領だけでなく、ホワイトハウスの高官、閣僚も思ってないというブルームバーグの記事を読んで、さらに驚いた。

「ホワイトハウスの高官2人は25日、トランプ米大統領には米企業に中国からの撤退を強制する権限があるが、実際にそれを行使するかどうかは別問題だと述べた。こうした権限を有するとの大統領の主張に対し、専門家は疑問を呈している」

さらに閣僚では、対中強硬派のボルトン補佐官やナバロ補佐官に比べ比較的、対中穏健派だった人物まで、大統領の暴走発言を肯定している。

「ムニューシン米財務長官は先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれているフランスのビアリッツで「FOXニュース・サンデー」のインタビューに応じ、トランプ大統領は非常事態宣言を行えば、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき強制的に米企業を中国から撤退させられると発言。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長もCNNの番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」とのインタビューでムニューシン長官の見解に同意したが、「現在はそうしそうにない」と語った。

専門家は否定的

IEEPAの原文をKobaちゃんは読んでいるわけではない。CISTECの解説を信用しているわけだが、トランプ政権高官、閣僚らは、大統領に絶大な権限を与える文言をIEEPAから読み取っているのだろうか。しかし、「専門家らはIEEPAをこのように活用することは本来の目的ではないと指摘した」とブルームバーグは伝えており、無理な解釈に違いない。

8月に入って、トランプ大統領は、追加関税第4弾の税率引き上げに始まり、中国に対し厳しい姿勢を取り始めている。ここ1、2カ月の交渉で、トランプ大統領を怒らせたり、不信感を深める何かがあったのだろうか。今回の常軌を逸した中国からの撤退命令は、実際にはやらず、トランプ流のホラで終わるだろうが、その怒りや不信感が震源だとすると、通商交渉合意は容易ではなさそうだ。

【トランプ大統領の23日のツイートは次の通り(冒頭ロイター記事から)】

「偉大な米企業に対し、中国の代替先を即時に模索するよう命じる。事業を米国に戻し、米国内で生産することも含まれる」
「われわれに中国は必要ない。率直に言えば、中国がいない方が状況はましだろう」

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