米中貿易紛争の決着 中国の聖域に踏み込むか

中国の聖域(サンクチュアリー)にどこまで踏み込むか--これが、トランプ政権にとって、米中90日間通商交渉の究極の争点であり、今後ホワイトハウス内で激論を呼ぶテーマになるのではないか。

1月7日から9日まで北京で開かれていた米中の次官級協議は、予定されていた2日間の日程を1日延長した。日経新聞は「米政府関係者はもともと「中国側から前向きな提案があれば延長するかもしれない」としていたため、協議進展のサインと受け取れそうだ」と伝えている。

記事はさらに「中国による米国産農産物やエネルギーの輸入拡大で双方が歩み寄ったとの見方がある。知的財産権の保護や技術移転の強制でも中国から新たな譲歩案があったもよう」と続ける。

これまで米中首脳会談で、習近平国家主席が1兆2000億ドルの米国製品購入を表明しており、その買い物リストが固まってきたのだろう。米側交渉団には、農務省、エネルギー省の担当官も参加しているので、金額や量などかなり具体的なことまで決めたのではないか。
知財についても、米国の要求に応じて特許法改正に向けた動きを加速させているとすでに伝えられており(Kobaちゃんの硬派ニュース)、この日経新聞記事も「中国政府が12月にまとめた特許法改正案には懲罰的な罰金を盛り込んだ。外商投資法案には技術移転強制を禁じる規定を盛り込んだ」としている。

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難題は国有企業への補助金

しかし、米中の間にはまだ多くの未決着の問題があり、とりわけ、国有企業への補助金が難題だ。「中国の指導者たちは巨大な国有企業を中国共産党支配の基盤だと見なしており、国営部門はここ2、3年でさらに巨大化している」と、ウォールストリート・ジャーナルが伝えているように、補助金問題はアメリカ産品購入のようにお金で解決できる問題ではないようだ。

中国にとって補助金が共産党支配という統治体制に関わる領域に踏み込んでいくやっかいな問題であるのと同様、米国にとっても、補助金は安全保障上に関わってくる問題としてとらえられている。補助金が戦略的に重要な半導体などハイテク産業につぎこまれているからだ。米国の貿易赤字削減という経済の領域を超えた地点での争いになってくる。

当面の交渉のタイムリミットは米中90日間交渉の期限である3月1日。交渉がまとまらなければ、3月2日に米国は2千億ドルの中国製品に対し追加関税を10%から25%に引き上げる(日経新聞)。

トランプ政権は中国政府のサンクチュアリーにまで踏み込んで、そこで何らかの成果を得るまでは妥協しないのか、それとも、中国の米国製品購入などを成果としていったん矛を収め、関税引き上げを中止するのか。

決定に至るまでに、ホワイトハウス内の対中強硬派であるボルトン大統領補佐官、ナバロ国家通商会議(NTC)委員長らがどこまで影響力を発揮するのか。

最終的にはトランプ大統領が決定するのだろうが、あれだけ熱心だった北朝鮮核ミサイル問題は、尻すぼみの印象があるし、2月、3月はロシアスキャンダルを捜査しているモラー特別検察官の報告提出の時期でもあり、対中交渉には気もそぞろになるかもしれない。適当なところで妥協して成果を強調する方向へ向かう気もする。

米中冷戦の通過点のひとつ

昨年10月5日、米国のペンス副大統領の演説は、米中冷戦の始まりと評された(Kobaちゃんの硬派ニュース)。その視点に立てば、今回の米中交渉は通過点のひとつにすぎないことになるだろうが、最初の通過点でもある。どう決着するのか。

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