中国 パナソニック、サムスン締め出し終わるか EV電池

ロイターが新年1月3日に流した記事が目についた。「苦境の韓国企業に光明か、車載用電池で中国規制に変化」という記事だ(再送記事のようだ)。

中国はNEV(新エネルギー車)大国を目指し、露骨な外資排除政策を取っているが、その政策を転換するということだろうか。

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わずか7年でパナソニックを追い抜いた中国企業

中国のリチウム電池メーカー、CATL(寧徳時代新能源科技)が創業わずか7年で、世界トップのパナソニックを抜き出荷量ナンバーワン企業へと驚異的な大躍進を遂げたのは、この外資排除政策のお陰だ。

どういうことかというと、CATLは、中国政府が認定する「ホワイトリスト」57社のうちの1社に入っている。中国ではEVなど新エネ車に補助金が交付されるが、車にホワイトリストメーカー製のリチウムイオン電池を搭載していることが交付の条件になっている。

リスト外のメーカー製の電池搭載車には補助金が出ないから車を売りたい自動車メーカーに選択の余地はない。57社はすべて中国企業で、パナソニックや韓国のサムスン電子、LG化学など海外の強敵はリストから排除されている。おまけに中国はNEVの最大市場。これだけ有利な環境に置かれれば、短期間でパナソニックを抜いても不思議ではない(「2022年の次世代自動車産業」田中道昭著、PHPビジネス新書252㌻、270㌻)。

冒頭のロイターの記事によると、そのホワイトリストが変更されるというのだ。昨年5月、中国の2つの自動車業界団体がホワイトリストに新たな「推奨リスト」を発表したが、その新しいリストにはLG化学やサムスンSDIが含まれていた。パナソニックも今後リストに加わるとの専門家の見方も紹介されている。

また、中国政府は2020年までに段階的にNEVへの補助金を廃止するとしている。補助金廃止ということはホワイトリスト廃止を意味する。2021年以降は、各メーカー対等の競争になる。

どちらも最近決まったことではなく、政策が急変したわけではない。ただ、外資企業排除の路線に修正を加え、市場を開放する兆候が出てきたというのが記事の趣旨だった。

市場開放の背景には、CATLのように海外企業に劣らない中国企業が育ってきたこともあるが、約150社にのぼるEV用電池メーカーの業界再編に迫られているからでもある。過剰生産を解消し、日韓メーカー製の電池性能に追いつくには、弱小メーカーの淘汰が必要との判断だ(日経ビジネス)。

ホワイトリストに直撃された韓国メーカー

実は、中国のホワイトリストに直撃されたのは韓国メーカーだった。サムスンSDIとLG化学は2015年10月にリウムイオン電池の生産工場を、それぞれ西安市と南京市に建設した。中国の自動車メーカーに供給するビジネスモデルを描いていたという(日経ビジネス)。

だが、その翌月にホワイトリストが発表された(同上ロイター)。実際に発動された時期は翌2016年のようだが、生産したリチウム電池の持っていき場所がなくなる事態に追い込まれたわけだ。

それが、昨年あたりからようやく光が見えてきた。後戻りはないと見たのか、LG化学は昨年7月、中国で第二のEV用電池工場建設を発表した。SKイノベーションは中国工場に追加投資する予定という(同上ロイター)。

2021年の中国におけるNEV車補助金廃止というエポックに向け、EV電池業界の動きが活発になりそうだ。