テスラ、隠れたもうひとつの救世主 排出権売却ビジネス

米電気自動車メーカー、テスラが7-9月期の決算で8四半期ぶりに黒字転換し、経営不安を脱したのは、すでに旧聞だが、業績改善に「排出権の売却」が電気自動車(EV)販売よりも貢献しているのを知って驚いた。

テスラの決算は10月24日発表され、売上高は68億2441万ドルで前年同期比2.3倍に増え、最終利益は3億1151万ドル(約349億円)を計上した。同社初の量販車である新型セダン「モデル3」の量産が軌道に乗ったことが業績改善の要因と日本のメディアは伝えている(日経新聞)。

しかし、最近読んだウォールストリート・ジャーナルの記事によると、量産効果だけではないという。決算発表後の11月2日に公表された四半期報告書(10-Q)で詳しくわかったそうで「最大の利益押し上げ要因は排出権の売却だ。テスラがEVをはじめとするクリーンエネルギー製品の生産で得ている排出権は、規制基準を満たしていない企業に売れる。同社は7-9月期に排出権の売却代金1億8950万ドルを計上したが、これは異例の高水準だ。1-3月期と4-6月期は合わせて1億3500万ドルほどだった。排出権の売却で得た分はテスラにとってほぼ純粋な利益だ」と記事は伝える(テスラの四半期報告書の15㌻にある「Automotive regulatory credits 」がそれだ。目立たない)。

売却代金1億8950万ドルは「ほぼ純粋な利益」と書いているので、売上に伴う費用はほぼゼロで、なおかつ税制上の優遇もあるのだろうか。その通りだとすれば、最終利益の60%を排出権売却でカバーしていることになる。モデル3の販売を上回っているわけだ。

テスラが排出権を売却しているのは主にカリフォルニア州のようだ。同州は温室効果ガス(GHG)削減のため排出権取引制度(Cap & Trade)を2013年1月から独自に実施している。同州のGHG排出量を2020年までに1990年レベルに抑制することを目標に、大規模な発電事業者、GHG排出量がCO2換算で年間2万5000トン以上の事業者に削減義務を課している(環境金融研究機構)。

自動車メーカーに対しては、販売台数の一定割合を電気自動車などZEV(排ガスゼロ車)とするよう義務付けている。テスラのように基準をクリアしているメーカーは「ZEV排出枠(クレジット)」を基準未達のメーカーに販売できる制度になっている。

排出権取引は、EUの取引所が有名だが、カリフォルニア州は、EUに次ぐ世界二位の規模(中国が2018年から始めたので三位の可能性も=日経新聞)で、昨年7月、州議会が2020年までだった期限を2030年まで延長することを承認した。

テスラからの買っているのはトヨタ

そして、カリフォルニア州でテスラから排出権を買っているのはトヨタなのだ。
「トヨタは2017年8月末までの1年間で、3万5200クレジットと業界で最も多くのクレジットを購入した。2位は米ゼネラル・モーターズ(GM)、3位は欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)だった」
「トヨタがクレジットを購入した相手はテスラである。同社は「モデルS」や「モデルX」などEVの販売が伸びており、義務量を大幅に超過した余剰枠がある。そのクレジットを販売している。同社は2017年4~6月期にZEVのクレジット販売で1億ドル(113億円)の売り上げがあった」

上記は昨年10月の日経ビジネスの記事だが、その後の2017年9月~2018年8月末には、トヨタの購入量はもっと増えている。カリフォルニア州大気資源委員会(CARB)の発表資料を見ると、販売者(Transferor)のテスラが8万8214クレジット、購入者(Transferee)のトヨタが8万8214クレジットとあり(資料の3㌻、「2017 Zero Emission Vehicle Credits」)、前年の2倍以上に増えている。

先日のブログで、米国における自動車の燃費規制緩和の動きをまとめ、EV(電気自動車)不要論まで飛び出していることを紹介した。トランプ政権は、カリフォルニア州独自のZEV規制の撤廃も提案している。排出権売却が業績に直結するテスラにとっては、とんでもない提案であるし、そもそも電気自動車の生産に先駆けたテスラの存在理由を揺るがす動きだ。

イーロン・マスクは、政権発足当初、トランプ大統領主宰の経営者会議に参加していたようだが、2年後の大統領選では不支持を打ち出すのだろうか。

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