謙虚でグローバル志向のファーウェイ創業者、任正非

米政府に制裁を受けた中国、ファーウェイ(華為技術)創業者の任正非レン・ツェンフェイ(Ren Zhengfei)CEOが相次いでメディアの長時間インタビューに応えている。

インタビューでの発言は、制裁を克服できる自信に満ちているが、その一方で、関係のあった日米企業への感謝を口にする謙虚さを忘れていない。何よりも市場経済とグローバリゼーションの大切さを理解し、中国政府や国民がナショナリスティックな方向に走らないよう訴えているのが印象的だ。

5月21日は、午前中に中国のほぼすべてのメディアの取材を受け、午後は中央テレビ局CCTVの単独取材に応じた。中国に精通している遠藤誉氏がCCTVのインタビューを紹介している(ニューズウィーク)。

日本のメディアからも5月18日に2時間に及ぶ取材を受けている(ビジネス・インサイダー)。以下、ニューズウィーク(①)とビジネス・インサイダー(②)から、任氏の発言を引用しよう。

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日米企業に感謝

日米企業への感謝は、
「華為の顧問企業の多くはIBMなどのアメリカ企業だ。アメリカの多くの部品工場も、ずっと華為を助けてきてくれた。どんなに感謝しても感謝しきれない。」(①2㌻目

「一番大事なのはお客さま志向だと思う。中国には安いものがあるが、それでもみんなが日本製品を買うのは、品質が素晴らしいからだ。日本にはお客さま志向がある。成長スピードや既存のマーケットに対する考え方も必要だが、それは一番ではない。一番大切なのは顧客の満足だ。
私たちの生産体制はトヨタを退職したエンジニアの方などから学び、品質管理制度にも日本のものを取り入れている。」(

あくまでも、オープンな経済環境を重視、志向する。

「世界経済は間違いなくグローバル化に向かっていて、そんな中では世界は一体となる必要がある。ある国が閉じこもって何か製品を作ろうとした場合、その製品の生産規模は大きくならず、コストがかさむ。すると社会のニーズを満たせないものになる。」(②)

それゆえ、内にこもるナショナリズムを嫌う。
「中国のメディアは、あまりアメリカのことを罵倒しないようにしてほしい。アメリカ企業と華為は運命共同体なのだ。われわれは皆、市場経済の主体である。アメリカ政府は、企業間のこの力を低く見積もり過ぎている。」(①2㌻目)

2、3年では華為に追いつかない

そして、米政府の制裁の影響については、ずいぶん前から衝突を想定し、準備していたからほとんど影響ないと自信を見せる。

「それでも、いずれこういう日(アメリカと闘わなければならない日)が来ることは分かっていたので、実は半導体に関しては準備してある。ただ、山頂で最後の決戦をするためにまみえるのではなく、私は山頂で抱き合って共に人類社会のために貢献したいと思っている。」(①3㌻目)「実は最先端の半導体は、全て華為自身で製造できる。」(①2㌻目)

「華為は世界の最先端を行っている。少しは成長速度が緩慢になるかもしれないが、たとえば今年の第1四半期の前年度同期比成長率は39%だった。4月はたしかに25%に落ちたが、大きな影響はない。」(①3㌻目)

「少なくとも5Gの領域では、アメリカ政府の禁輸令の影響を受けることはない。影響を受けないだけでなく、他の企業は、2、3年では華為に追いつかないという自信がある。」(①2㌻目)

こうした任氏の発言を読む限り、ファーウェイは、自由経済を標榜する日米欧の文化にきわめて近い企業と言え、トランプ政権は叩く相手を間違っているように見える。

しかし、ファーウェイが政府の要求には逆らえない独裁国家・中国の企業という宿命から免れないのも事実だ。ファーウェイが中国政府にシンパを形成して自由経済的な政策を採らせるようになればいいが、職人肌の任氏は、そうした政治工作とは無縁な人物のようだ。

制裁を受けた後も、任氏のオープンな精神は救いではあるが、米中の争いは、企業の意思を超えたものであることがファーウェイにとって悲劇だ。

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