米中 トランプ激怒も無理はない 中国タカ派が絡んでいれば厄介

トランプ米大統領のツイート後、合意に向かうと見られていた米中通商協議の見通しは二転、三転した。その経過を追っておこう。

二転、三転の経過

問題のツイートが発信されたのは5月5日正午過ぎ(現地)。ニュースで何度も伝えられているが、2000億ドルの中国製品の関税率を金曜日(10日)に10%から25%に引き上げ、3250億ドルの中国製品にも近く25%を課税する、という内容だった(日経新聞)。

中国、いったんは「協議中止」検討か

中国は、8日から劉鶴副首相が交渉団を率いてワシントンを訪れ11回目の通商協議に臨むところだった。しかし、突然のトランプ大統領のツイートは中国当局者を驚かせ、「中国政府は協議を中止する方向で検討している」とウォールストリート・ジャーナルは伝えた。

11回目の協議で合意に達する可能性が期待されていただけに、協議中止なんてメディアも市場も想定外だった。日曜だったため、ニューヨークの株式市場は閉じていたが、シカゴ市場で取引されているダウ先物は、協議への失望から米東部時間の5日午後6時過ぎ(日本時間6日午前7時過ぎ)に496ドル(1.9%)下げた(日経新聞)。

翌6日の上海市場は、171.87ポイント安、▼5.6%と、暴落と言っていいほど下落した。しかし、中国国内では、トランプ大統領のツイートは一切、報じられなかった(共同通信)。日本は10連休最後の休日で東京市場は開いていなかった。

その後、中国は「協議継続」

しかし、6日の記者会見で、中国外務省の耿爽副報道局長は、8日から開かれる予定の米中通商協議について「中国側代表団は現在、訪米する準備をしている」と述べ、協議継続の意向を示した(共同通信)。

中国側の比較的冷静な対応でテンションが少し和らぐとともに、大統領のツイートは、通商協議を有利に進めるためのトランプ流の脅しであって、本気ではないのではないかという見方も広がった。このため、6日のニューヨーク株式市場はダウは一時470ドルを超えて下げたが、66ドル安まで戻した。

トランプ大統領の真意はわからないままだったが、今度は6日(現地)に、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が、「中国が貿易交渉での約束を撤回した」と非難し、週内に中国製品2000億ドルに25%の関税を課すと語り、トランプ大統領のツイートが本気であることが判明した(AFP)。

ちゃぶ台返しは中国だった

「撤回した約束」が何を意味しているのかは、ライトハイザー代表は明らかにしていないが、ブルームバーグによると、中国側は「法改正が必要になるような協定には同意しない」と米国に伝えたという。「中国はそれまでは合意テキストの中で法改正に同意していたという」。中国進出の米企業に強いられる知的財産の移転に関する法改正を指しているらしい。

ライトハイザー代表がこのことをトランプ大統領に報告し、これに大統領が激怒、ツイートにつながった(同上ブルームバーグ)。

これまで米中協議では、中国共産党の統治体制にかかわってくる「国有企業に対する補助金」など難題は先送りする代わりに、「技術移転や知的財産権保護などで実質的な進展を収めた」と国営通信の新華社も伝えるほどだったから、それを巻き戻したらトランプ大統領が激怒するのは無理もないだろう(Kobaちゃんの硬派ニュース)。

ブルームバーグの報道が正しければ、ツイート当初は、トランプ大統領のちゃぶ台返しに見えたが、実は、先にちゃぶ台を返していたのは中国だったことになる。

世界覇権を狙う中国を描いた『China 2049』(日経BP社)の著者、マイケル・ピルスベリー氏は、再交渉を図ろうとする中国側の試みは、中国のナショナリスト、タカ派が協議を譲歩と主張している明確なサインと語っている(POLITICO)。

もし、中国が協議の巻き戻しにこだわれば、物別れもありうるかもしれない。中国タカ派の策動だとすれば、結構、厄介だ。

トランプ大統領は、中国ばかりでなく、ムニューシン財務長官やクドロー国家経済会議委員長にもフラストレーションを感じているゆえのツイートとピルスベリー氏が見ているのも面白い。彼らが合意間近を強調して、協議の実体を伝えていないことへの苛立ちらしい(同上POLITICO)。

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