米メディアがあおる「通貨戦争に発展」 反対意見もあり

米国発の貿易戦争が通貨戦争に発展しつつあると米国のメディアが伝え始めている。(Bloomberg)(CBS

20日(金)にトランプ米大統領がツイッターで、「中国とEUが自国通貨と金利を低くするよう操作している」と書き込んだのがきっかけだ。

折しも、21日から20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がブエノスアイレスで開かれていたが、ムニューシン米財務長官は「強いドルへの長きにわたるコミットメントは変わらないとあらためて強調。米国はドル相場に介入するつもりはない」と語るなど、米国の方針を明確にしたため、通貨戦争リスクは後退した(ブルームバーグ)。

確かに、人民元はここのところ安値を続けている。この1カ月ほどで7%以上下げている。しかし、それは、米国の関税攻勢で中国経済がダメージを受けるとの理由によるもので、市場の合理的な反応と見られている。

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トランプを敵に回す意図はない

中国政府には人民元安に嫌な記憶がある。世界同時株安を招いた2015年、16年の時の経験だ(Kobaちゃんの硬派ニュース)。だから、元安操作には抵抗があるはず。

市場参加者の中にも、通貨戦争への発展に否定的な意見があり、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのチーフ為替ストラテジスト、マーク・チャンドラー(Marc Chandler)氏は「中国がトランプ氏を敵に回す意図はない」と見る。そして、「中国人民銀行にとっては、貿易戦争と経済減速に直面して、人民元の急落は防ぎたいだろう」と述べる。むしろ、「中国にとって、(トランプツイートは)人民元をスパイラルに下落させない良い機会になるかもしれない」(CNBC)と言う。

トランプ大統領に「為替操作国」とずっと思われ続けられたら、対中制裁に拍車がかかるから、まずいことになるけど、Kobaちゃんも現時点では、チャンドラー氏の見方が的を射ているように思う。

米国の追加関税による輸出価格の上昇を人民元安で相殺させたい動機は中国には十分にある。ほどほどの人民元安は歓迎のはずだ。しかし、急落を招きかねない人民元安誘導は危ない橋で、渡る気は起きないはずだ。中国から為替戦争を仕掛ける状況にはないと見るのがナチュラルではないか。