ナバロ発言で姿を見せたトランプ「ファーウェイ禁輸緩和」の中身

G20大阪サミット閉幕後の記者会見(6月29日)で驚かされたのは、トランプ大統領がファーウェイ(華為技術)に対して、「アメリカ製品をこれからも売ることを認めていきたい」と禁輸措置の緩和を宣言したことだ(日経新聞)。

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禁輸緩和はローテクで全体の1割弱

5月17日に発動したばかりの禁輸措置(注)を早々に全面撤回するつもりなのか、それとも一部撤回なのか。その後の動きが注目されていたが、2日、ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)がCNBCのインタビューに対し、「販売するのは、国家安全保障に影響のないローテク製品で、年間10億ドルに満たない半導体であり、小さなことだ」と語った(Reuters)。

(注)ファーウェイのような外国企業を「エンティティリスト」に加え、禁輸対象にする米国の輸出管理法については、「トランプに逆らえば制裁されるのか 米大統領が持つ制裁武器①」をご覧ください

ファーウェイの米国製品の購入額は年間110億ドルにのぼる。売っているのは、クアルコム、インテル、マイクロン・テクノロジーなど半導体企業だ(Kobaちゃんの硬派ニュース)。

10億ドル程度ならば、その10%に満たない。無視できるほど小さくはないが、全体に影響を及ぼす割合かと言えば、それほどでもないだろう。しかも、ローテク製品ともなればなおさらだ。ファーウェイが欲しいのは、最先端の5G通信機器に必要な電子部品なのだから。

ナバロ補佐官は、政府は同盟国とファーウェイの5G技術を採用しないよう緊密に協力を続けると発言、そして、ローテク半導体の販売を認めれば、中国は交渉のテーブルに戻り、大量の農産品を買う約束をするだろうと語った。

また、米中貿易交渉そのものについては、「われわれにとって大変いい方向に向かっている。ただ、大統領が言ったように、複雑で時間がかかる」と述べた(同上Reuters)。

インタビューでは、対中強硬派として知られてるナバロ補佐官らしく、「中国の全体計画は、5Gを支配するだけでなく、人工知能、ブロックチェーン技術をも支配することにある。これを見逃すわけにはいかない」とハイテク覇権を狙う中国の野望に言及することも忘れなかった。

しかし、禁輸緩和の中身が補佐官の言う通り10億ドル程度のレベルであれば、中国は納得しないのではないか。再開する米中交渉を合意に向かわせる有力材料にはなりえないと思うが。

中国はトランプ緩和発言に沈黙

その中国は、米中首脳会談後、ファーウェイ関するトランプ発言を一切報じていないという。

中国政府は、二人の指導者が休戦することで同意し、米国が新たな対中関税(第4弾)を中止することを伝えた短い声明は出した。しかし、ファーウェイについては、習主席が、中国の会社を公平に扱うようトランプ大統領に要請したことを伝えただけで、国営通信の新華社も外務省もフーアウェイについて言及していない(South China Morning Post)。

もし中国が米国の禁輸緩和が譲歩とは言えない軽いレベルものだということを知っていたならば、この沈黙の意味もわかる。

今回の米中首脳会談に対する中国側の反応は極めて静かだ。前回首脳会談時の反応と全然違う。昨年12月、ブエノスアイレスでの会談の際は、王毅外相と王受文副商務相が中国、海外メディアに2、3時間ブリーフィングするというサービスぶりだった(同上South China Morning Post)。はしゃげない事情があるのだろうか。

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