米中覇権争いのタネ 5Gの実力

 ファーウェイの孟副会長逮捕の背景には、次世代モバイル通信技術5Gをめぐる米中の覇権争いがあると、さんざん言われているので改めて5Gの実力を調べてみた。なるほど、ただ速いだけというわけではなさそうだ。

 5Gをサイバー攻撃に利用するといった安全保障上の脅威が覇権争いの一因にもなっているが、ここでは、社会一般に与えるインパクトを見てみる。

4Gとの性能比較

 まず、5Gの性能を数字の上から確認する。5Gが優れているのは、下図にあるように、①超高速=上り10Gbps、下り20Gbps、②超低遅延=1ミリ秒(1000分の1秒)、③多数同時接続=1平方キロ当たり100万台の機器--の3つに集約される(平成28年版情報通信白書)。

 Gbpsは、毎秒1ギガの速さ。現在普及している4G/LTEと比べると、速度が20倍(4Gの速度の取り方によって100倍という数字もある)。4Gでは7分を要した8GBのHD映画のダウンロードが、5Gではわずか6秒で完了するという。

 遅延は4G/LTEに比べ10分の1(50分の1という数字もある)、接続台数は100倍と格段に性能アップする。

 携帯電話は無線の性能がアップするに従い、使い道が広がってきた。無線がアナログからデジタル化した2G携帯では、それまで通話だけだったがメールができるようになった。1999年に始まったドコモのiモードはwebページの閲覧が可能になった。

 4Gでスマホ全盛を迎えるが、5Gはスマホを飛び越え、自動車やドローン、スーパーやコンビニのほか、ポストスマホとして有力視されているVR(仮想現実)、AR(拡張現実)に利用されるようになる。
まさに、社会に飛び込んでいくイメージだ。

自動運転に5Gが不可欠なわけ

 自動車での利用は、自動運転には5Gが不可欠だ。自動運転の際、車の周囲の地図は、信号やガードレールの位置など静的情報だけでは不十分で、渋滞情報や事故による通行規制など刻々と変わる動的情報も必須になってくる。高速・大容量のモバイル通信システムこそ、膨大なデータを車から受け、そして車に送る担い手にふさわしい。

 5G電波の超低遅延性も自動運転の際の事故を防いでくれる。「時速100㎞で走る自動車が通信制御を行う場合、0.05秒の遅延が考えられる4Gでは、異常を検知→停止指示→実際に停止するまでに1.4mも進んでしまいます。これでは、命に関わる事故が起こらないとも限りません。一方の5Gはというと、指示から停止までの距離を2.8㎝にまで縮めることができます」(富士ソフトのサイト「KUMICO」)。

 遅延の克服は、超高速化に比べると地味に映るが、離れた場所から手術する遠隔医療や建機、ロボットの遠隔操作など、実際の手の動きが即座に伝わる正確さを求められる作業には重要なポイントだ。

 また、すでに一部で現実化しているがコンビニの無人化を5Gがさらにグレードアップさせうる。たとえば、消費者が卵を買おうとすると「ご自宅の冷蔵庫に卵10個が残っています。賞味期限も 10日あります」と知らせるような機能だ(総務省移動通信課 28ページ)。

 さらに、IT業界では需要が頭打ちになってきたスマホに続く便利製品の誕生を競っているが、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)はその候補の一つ。いまは人気がないが、5Gによる機能アップが図られている。

 4Gはスマホで「ポケットの中のパソコン」を実現したが、5Gは社会をもっと大きく変える力を秘めているようだ。その世界標準を握ろうとするファーウェイと、背後にちらつく中国政府、そうさせまいとする米国。10年後には、5Gが当たり前の世界になっているはずだ。覇権争いの勝敗にメドがつくのは、ここ2、3年のうちだろうか。

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