株乱高下の原因は、コンピュータたちの”群集心理”

米国株が乱高下し、日本株も振り回されている。米中貿易紛争の激化懸念や景気減速など株下落の理由が語られているが、極端に大きい株価の動きは「ディーラーの多くが休暇に入っており、AIによる自動的な損失確定の売りが出たため」という(ニューズウィーク、冷泉彰彦氏)。年末休暇でディーラー不在の無人のファンドオフィス。コンピュータが自動で動いて株を売買しているイメージが頭に浮かぶ。

冷泉氏の記事には、その一言しか書かれていなかったので、調べてみると、Wall Street Journalが12月25日に流している「マーケット気絶:コンピュータ取引の群衆行動が背景に(Behind the Market Swoon: The Herdlike Behavior of Computerized Trading)」という記事を見つけた。

記事に出てくるプロの投資家は、株式市場の構造が変わったという。ロンドンを本拠に1.8兆円の資産を運用するCQS LLPのミカエル・ヒンツェCEOは「投資銀行の取引が減り、ファンドによるアルゴリズム取引が増えた結果、投資家が容易に売買できなくなった。結果的に、年末特有の過敏さが増し、売りが想定以上の下落を呼んでいる」と語っている。

アルゴリズム取引とは、株式市場ではおなじみの言葉だが、コンピュータにあらかじめインプットされたプログラムが株価や出来高に応じて自動的に売買する超高速取引のことだ。

コンピュータが株価を左右し始めたことはもう10年ほど前から報道されており、決して目新しいことではないが、近頃ますますその度合いを深めているようだ。Wall Streetの記事によると「おおよそ、取引の85%が機械やモデル(取引プログラム)による自動取引で、それが同一で驚くほど高速な途轍もない量の取引を生み出している」という。

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「一斉売り」「一斉買い」

いまや株式市場の主役は、プログラムで売買するコンピューターや相場の流れに沿って取引するパッシブファンドで、かつての売り買いの主役だった銀行やブローカーは退いてしまった。その結果、いまの株式市場は、コンピューターが買い始めたら、皆が買い、売り始めれば、皆が売るという構造になったという。

「機械やモデル取引が株価の動くマグニチュード、スピードを激しくしている。人間はこんなに速く、荒々しく反応しない」と、記事はEagle’s View Asset Managementを運営するニール・バーガー氏の言葉を紹介している。もはや株価は、トレーダーの手が及ばないコンピュータの”群集心理”が決めているようだ。

「一斉売り」あるいは「一斉買い」に走りやすいようになった株式市場。売り買いのきっかけは、経済の実勢(ファンダメンタルズ)なのだろうが、たとえば、景気の落ち込みの程度が株価に100ドル下落程度反映すれば適度な調整なのに、コンピュータ取引が500ドルまで下落させてしまう、そんな風に株式市場が変わったということだろう。

その場合、経済の実勢に合わせて、株価は値を戻すのか。戻したとしても、その期間が長ければ、今度は下落した株価そのものが経済実勢にマイナスの影響を及ぼす。

Wall Streetの記事は、「一斉売り」症状の最近の株式市場を最もうまく言い表すならば「グローバル経済のトラブルというよりも金融市場のトラブル」と伝えている。静的に見ればその通りだが、動的に見れば、たとえ、金融市場の反応が誤っていたとしても、それが経済にトラブルを起こさせる可能性もありそうだ。

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