2018年の日本経済をさらっと数字で振り返ってみた。
まず、注目度の高い株式市場。下表の通り、18年初の1月4日から3491.56円下げた20014.77円で28日の大納会を終えた。かろうじて2年連続で2万円台を維持したが、前年割れは7年ぶりで、「アベノミクス」が始まってからは初めてだった(産経新聞)。
年初 | 年末 | 騰落率(%) | |
日経平均(円) | 23506.33(1月4日) | 20014.77(12月28日) | ▼14.9 |
NYダウ(ドル) | 24824.01(1月2日) | 23327.46(12月31日) | ▼6.0 |
上海総合(ポイント) | 3348.33(1月2日) | 2493.90(12月28日) | ▼25.5 |
1ドル=円 | 112.73(1月4日) | 110.53(12月28日) | |
日本の株式市場はニューヨーク市場の上下をほぼなぞるミラー相場で、ダウの上昇に伴い、日経平均も一時は27年ぶりの高値もつけたが、米中貿易摩擦や米国景気の減速懸念でダウが大きく下げると、引きずられて10月から下降トレンドに入った。
東京市場はどうも下げ圧力に弱いようで、日経平均の年初終値からの下落率は14.9%と、ダウ6.0%の2倍以上落ち込んだ。ミラー効果が増幅してしまうのは、実体はサラリーマンが運用する機関投資家の横並び精神のせいだろうか。
中国は米中貿易摩擦で、米国の標的であることに加え、景気も減速懸念で上海総合指数が25.5%と大幅に下げた。
為替は、最近、円高方向に傾いているが、今年1年を通じてはそれほど大きな動きはなかった。
景気、デフレ
1~3月期 | 4~6月期 | 7~9月期 | |
GDP成長率(実質、年率) | ▼1.3 | 2.8 | ▼2.5 |
消費者物価指数(総合、%) | 1.4(1月) | 0.8(11月) |
景気の全体指標となるGDP成長率(実質)は、1~3月期は前期比マイナスで始まり、4~6月期はリバウンドしたが、7~9月期に再び2.5%減(年率)と大きく落ち込んだ。台風に襲われた関西国際空港の閉鎖で訪日外国人が減少、輸出にも支障が出るなど自然災害の影響が大きかった。今年の景気はこれまでのGDP指標を見る限りあまりパッとしないが、10~12月期はどこまで回復したか。
12月20日に政府が発表した12月月例経済報告の景気判断は「緩やかに回復している」と12カ月連続で据え置いた(日経新聞)。
2%の物価安定目標は今年も達成できなかった。むしろ上昇の勢いが鈍っており、消費者物価は1月は前年同月比1.4%増だったが、11月は0.8%増と1%を切った。12月月例経済報告でも、国内企業物価について、11月の「緩やかに上昇」から「このところ上昇テンポが鈍化」に表現を変更した。
好調な雇用 増えない実質賃金
失業率(%) | 2.4(1月) | 2.5(11月) |
現金給与総額(名目、%) | 1.2(1月) | 1.5(10月) |
現金給与総額(実質、%) | ▼0.6(1月) | ▼0.1(10月) |
景気があまりパッとしないのに比べ雇用は絶好調だ。雇用の指標は実際の景気の動きを遅れて反映するので、今後も楽観できるわけではないが、失業率を見ると、1月が2.4%で11月が2.5%と約25年ぶりの低水準で1年間推移している。日銀は景気に適度な構造失業率、つまり景気を過熱させたり、冷やしすぎたりしない水準の失業率を3%半ばと公けに表明していたが、その数字をはるかに上回っている。
3%半ばという日銀の推定が誤っていたのだろうが、それにしても、これだけ雇用がひっ迫してきたならば賃金が上昇し始めてもおかしくないはずなのだが、上昇率は鈍い。名目賃金は、1%ちょっと上昇しているが、物価変化率を反映した実質賃金は、1月は0.6%減、10月も0.1%減とマイナスゾーンだ=いずれも前年同月比(毎月勤労統計10月確報2㌻目)。
現預金抱え込む企業
1~3月期 | 4~6月期 | 7~9月期 | |
企業経常利益(前年同期比、%) | 0.2 | 17.9 | 2.2 |
現金・預金=億円(前年同期比、%) | 2021328(6.8) | 2019783(5.4) | 2021996(1.3) |
企業活動はどうだったかというと、法人企業統計7~9月期(7ページ目、財務省)によると、経常利益は、1~3月期0.2%増、4~6月期17.9%増、7~9月期2.2%増(いずれも前年同期比)と通年すれば増益。増益率は以前ほど高くはないようだ。
企業が保有する現預金は増え続けている。200兆円を超えている。18年前半は昨年よりも5~6%の高い伸びを見せている(7~9月期11ページ目)。「投資先がない」「いざという時に備えて」とお金を使うことに消極的だった日本企業もようやくITへの設備投資や海外企業買収などに使い始めているようだが、現預金の伸び率と鈍い賃金上昇率を見ると、従業員に回るお金はいまだ不十分のようだ。
「企業収益拡大→雇用拡大→賃金上昇→消費拡大→さらなる企業収益拡大」というアベノミクスが目指した「経済の好循環」は2018年もまだ達成できなかったようだ。