「ヤフー・LINE統合」 AI、フィンテックへ拡大のために必須の一手 ホリエモンは予測

国内では、「LINEの天下」は揺るがないように見えた。でも、LINEもヤフーもいまのままでは大きくなれない--両社統合の様々な解説記事を読んでわかった。統合は、いま打つべき一手であり、理にかなった手を打つ孫正義氏としては当然の決定なのだろう。ホリエモンは統合を予測していた。
以下、統合の狙いや今後の展開などをまとめた。

メディアの報道を受け、両社とも、協議している事実は認めているが具体的なことは発表されていない。報道の通りに事が運ぶかどうかはまだ不透明だ。

①統合の衝撃度--勢力図激変

②統合の狙い、効果--両社とも悩みを抱えている

③Zホールディングスって何? SBG内の複雑な出資関係

④統合は、うまくいくのか

⑤次はメルカリか ホリエモンの予想

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①統合の衝撃度--勢力図激変

LINEアプリの利用者は約8000万人、ヤフーのサービス利用者は約5000万人に上る。もし、統合が実現すれば金融やEC、小売りなども含めた大規模なサービス基盤が誕生し、国内IT産業の勢力図に大きな影響を与えることは確実(東洋経済オンライン「ヤフーとLINE「統合」実現すれば何が起こるのか」田中道昭・立教大学ビジネススクール教授)。

②統合の狙い、効果--両社とも悩みを抱えている

▽ネットサービスはこれまで、電子商取引(EC)は、アマゾン、楽天、SNS(交流サイト)はフェイスブック、LINE、ニュースサイトはヤフーなどサービスごとにネット企業が分散してきた。しかし、中国の騰訊控股テンセントは、対話アプリ「ウィーチャット」のほか、ネット通販や決済、動画配信、ゲームなどを手がけ、1つの窓口で各種サービスを提供している。利用者は10億人規模にのぼる。単独サービスだけでの事業展開はジリ貧だ(日経新聞「ヤフーとLINE経営統合へ ネット国内首位に」)

▽ヤフーの利用者は、「ネットはパソコンで始めた」という30代以上がメイン。一方、LINEはスマホメインのユーザーが圧倒的。ヤフーもスマホにシフトしたが、他社からは完全に乗り遅れた。ヤフーは、スマホにおけるユーザー接点を奪うために、LINEを経営統合するという選択をしたのだろう」(週刊文春「ヤフーはLINEの何が欲しかったのか?」石川温)。

▽両社にはそれぞれの悩みがあったという。「LINEは、スマホ決済や人工知能(AI)への積極投資など多角化戦略を進めているが、先行投資の負担が大きく営業赤字に沈んでいる。2019年1~9月期の連結決算は、最終損益が339億円の赤字だった。昨年は60億円の赤字で、LINEペイやAI、フィンテックなどの戦略事業への先行投資がさらに赤字を膨らませた。ユーザー数の伸びも頭打ちだった。
一方のソフトバンクとヤフーはECなどネット事業が万年3位。1位を目指してZOZO買収などを行っているものの、決定打を持っているとは言いがたい」(東洋経済オンライン「ヤフーとLINE、浮上した「経営統合」の衝撃度」山田雄一郎)。

③Zホールディングスって何?  SBG内の複雑な出資関係

メディアは見出しで、「ヤフー・LINE統合」と表現するが、今回の統合の交渉は、ヤフーの親会社のZホールディングス(ZHD)とLINEの間で行われている。その交渉には、ZHDの株式の4割超を握るソフトバンクとLINEの株式の7割超を保有する韓国NAVERネイバーも加わっている。

LINEの方は、NAVERに直結するだけだが、ヤフー側は、親会社、子会社だけでなく、孫会社、曾孫会社もありソフトバンクグループ(SBG)内の出資関係は複雑だ。上記、東洋経済、山田記者の記事に掲載されている図がわかりやすい。

ヤフーの親会社のZホールディングスは、10月1日に発足したばかり。元々のヤフーが持株会社体制に移行しZHDに社名変更した。旧ヤフーを引き継いで東証1部上場を継続している。

では、「LINEと統合」と言われるヤフーは何かというと、これまでのヤフー事業(ニュースや検索など)を引き継いだ会社で、ZHDの子会社である。ZHDの下には、PayPay、アスクル、一休、GYAOなどがぶらさがっている。前澤友作氏創業のZOZOもZHDの傘下。

このZHDの株式44.64%を握るのが携帯電話会社のソフトバンク(SBKK)だ。これまでは、グループの上位にいるソフトバンクグループジャパン(非上場の中間持株会社)が大株主だったが、実業に直接携わるソフトバンクがその役を引き受けた(YAHOOニュース)。

④統合は、うまくいくのか

ウォールストリート・ジャーナルは、両社の統合はシナジー効果を生むが、統合の成功は、異なる世代にサービスを提供している両社の文化の違いをうまくマネージメントできるかにかかっているという。

実は、この文化の違いを、両社で相互補完した経緯がある。前述の文春記事で石川温氏が書いている。

LINEが始めた格安スマホ「LINEモバイル」は、2018年に自社単独での経営を断念し、ソフトバンク(ソフトバンクグループのことか?)が51%出資して救済した。表向きは「LINEモバイル」だが、実は、ソフトバンクの傘下にある。

ソフトバンクの携帯電話事業は、「ソフトバンク」と、「ワイモバイル」、さらに「LINEモバイル」という3つのブランドを抱えているわけだ。

3つの販売網の棲み分けについて、ソフトバンクの宮内謙社長は、石川氏のインタビューに答えて、「ソフトバンクはiPhoneを中心とした大容量プラン、格安のワイモバイルはショップで接客して販売し、同じく格安のLINEモバイルはネットで契約や購入できる人を対象にしていく」と語った。それぞれのユーザーの特徴に留意しての相互補完に取り組んでいた。

⑤次はメルカリか ホリエモンの予想

ホリエモン、こと堀江貴文氏は、ヤフーがZOZOを買収したときに、ツイッターに「つぎはLINE」と投稿しており、株を上げた。

「PayPayで覇権を取るってことを考えると、つぎはLINEあたりがターゲットかなー。親会社(NAVER)が50%以上持ってるし買いやすい」

その堀江氏、ヤフーの次の狙いはメルカリと見る(YouTube、5分45秒)。孫氏の構想、ヤフーが置かれている状況を考えるとありうる展開だ。

国内だけでなく、LINEとの統合に成功したならば、孫氏はLINEの勢力圏にある台湾、タイをベースに中国や東南アジア、インドなどに何か仕掛けていくのではないかとの想像もふくらむ。巨額資金を集めるビジョンファンドも含め、ソフトバンクグループの活発な動きは刺激的だ。