加賀市のブロックチェーン都市宣言を調べてみた

「ブロックチェーンで人口減少に歯止めをかける」。そんな先進的な取り組みが石川県加賀市で昨年3月から展開されていることを知った。1年以上前のニュースではあるが、日本初の「ブロックチェーン都市」を宣言したというので、その後の動きも含め、一体どんなことをやっているのか知りたくなり調べてみた。

ブロックチェーンは、ビットコインなど暗号通貨の信頼性を保証する技術として脚光を浴びた。次いで金融ビジネスを一変させるフィンテックの中心技術としても注目を集めた。

そればかりか、見も知らぬ相手とやりとりすることもあるインターネット上での取引を保証してくれるというブロックチェーンの最大の特性を生かせば、土地登記や資産管理、商流管理、医療情報などの情報のやりとりも安心してできるようになる。

加賀市はそのブロックチェーン技術を行政に応用しようというわけだ。知恵袋になったのが、グーグル日本法人社長だった(2003~08年)村上憲朗氏だったという。

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目標はエストニア

村上氏は、加賀市に赴き、「宮元市長に会ってみると、目標は世界有数のIT(情報技術)大国であるエストニアだという。あらゆるモノがネットとつながるIoTやAI(人工知能)などによる第4次産業革命は確実に地方にも波及する。加賀市にとっては北陸新幹線と同じように、やってくることが決まっているが、まだ届いていないという状況にある。将来を見据え、慌てない準備が必要だという問題意識に共感した」(日経新聞)。

村上氏は、大阪のIT企業、シビラの顧問を務めており、加賀市のプロジェクトもシビラがブロックチェーン技術やノウハウを提供し、同じく大阪のIT企業、スマートバリューが企画・事業設計を行っている。

具体的にどんなことをやるかというと、▽ブロックチェーン技術を活用した地域活性化の共同研究▽ICT技術を活用した地域経済▽産業振興▽電子自治体の推進▽地域でのIT人材育成、雇用創出だが、当面は行政サービスの効率化に寄与する業務に着手する(PC-Webzine→ダイワボウ情報システムが運営するサイト)。

まず証明書、給付金申請から

ブロックチェーン都市宣言から半年後の9月19日、市は「ネット窓口」一本化の発表にこぎつけた。こんな内容だ。

ブロックチェーン技術を使った「KYC認証」を経て、本人確認すれば、証明書の発行や給付金申請などの手続きがスマートフォンなどからもできるようになる。イベントや施設の予約、民間事業者が提供する各種サービスの利用もインターネット上の一つの「窓口」から可能になるという(北國新聞)。

KYCとは、Know Your Customer、顧客確認のことで、本人かどうかの認証だ。ブロックチェーンを使わなくても電子化は可能だが、それに対応した強固なセキュリティシステムを構築しなければならず、その分コストがかさんでしまう。ブロックチェーン技術を採用すればコストが削減でき、高度なセキュリティも実現可能となるという(同上PC-Webzine)。

北國新聞の記事によると、加賀市の新しい「窓口」は今春から試行されることになっているが、市のHPにアクセスしてもそれらしいものはまだ見つからなかった。

加賀市は、人口6万7000人。山代温泉、山中温泉、片山津温泉と有名温泉に恵まれ、九谷焼でも知られている。年間200万人の観光客が訪れる。そんな観光の町がブロックチェーン都市を宣言するのに驚きもあって調べてみた。

でも、ITに理解のある町として認知されれば、IT企業の事業所、研究施設なども誘致できるかもしれない。プロジェクトが実を結ぶことをぜひ期待したい。