「アビガン効き目あり」の報告相次ぐ 即効性の威力

 

新型コロナウイルス化感染症の治療薬として期待されている「アビガン(一般名ファビピラビル)」について、医療現場から「効き目がある」との報告が相次いでいる。いくつかを紹介しよう。

 これらの報告を読むと、アビガンの即効性を期待してもよさそうだ。投与翌日から症状が改善される症例が目立つのだ。また、アビガンは、「重症化する前に効果的」とされているが、人工呼吸器を使った患者さんにも効いた例があり、目を引いた。

 本文では、投与翌日から効き始める透析患者に朗報カレトラをアビガンに変えたら即効肺炎患者5人すべてが回復、の順に紹介するが、患者さんの症状や経過を記したので、自分や家族に感染が疑われたときの参考になると思う。

 報告の出所元は、日本感染症学会のサイトで、査読を経ている。
このサイトから、当ブログは4月5日に3例紹介したが(「アビガン」はなぜ、新型コロナウイルスに強いのか)、今回は、それ以降にサイトにアップされた症例だ。

 どの報告も、薬品名の表現を、商品名のアビガンではなく、一般名、ファビピラビルを使っているが、ここでは、アビガンに変えさせてもらった。

 報告して下さった各病院の医師の方々、そして、自らの症例を匿名とはいえ、公にするのを了承したのであろう患者さんたちに、貴重な情報を公開していただいたことに感謝致します。引き続き医療現場で頑張る医師、看護師の方々に、勝手にエールを送らせていただきます。

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投与翌日から効き始める

 東京品川病院では、急激に呼吸状態が悪化した患者にアビガンを投与したところ、投与翌日には、改善した。この経験から同病院は、重症化する前に投与検討の必要性を報告している。

 患者さんは、39歳男性。入院10日前から発熱、倦怠感があった。近所の医師の診察を受け、対症療法(解熱剤などだろう)を受けたが改善しなかった。

 相談した保健所に同院を勧められた。入院時の体温は38.2度。両肺に陰影があり、呼吸状態が悪化していた。動脈血中の酸素濃度を示すSpO2値が2日間で、標準値内の96%から90%(呼吸不全の可能性)へと急速に低下していた。

 入院当日にアビガンを投与したところ、翌日には、早くも解熱と倦怠感が消失、低酸素血症も改善し、何と投与3日目にはPCR検査が陰性化となった。

 同院では、2例の呼吸不全の患者を治療した経験があるが、呼吸不全からPCR検査が陰性化するまで27日、37日もかかった。アビガンを投与していなかったのだ。この患者さんについて、同院は、「本例は非常に速やかにPCRの陰性化を認めている。」と報告している。

透析患者に朗報

 名古屋大学医学部附属病院では、透析患者にアビガンを投与、人工呼吸器が必要なほど重症だったが、肺炎像が消えるまで回復した。透析患者は免疫力が低下しているそうで、それだけにこの報告は朗報だろう。

 患者さんは、50歳代の女性。入院時は体温39.3度で、肺炎と診断された。入院当初は、アビガンではなく、治療候補薬に挙げられているカレトラ(ロピナビル/リトナビル)とオルベスコ(シクレソニド)を投与したが、肺のX線写真、呼吸状態ともに急速に悪化し、第6病日に気管挿管による人工呼吸器を始めた。

 腎機能低下患者へのアビガンの使用報告はなかったが、担当医は、院内の適応外申請をした後に家族の同意を得て同日より投与を始めた。

 すると、投与開始後より体温、CRP、X線所見いずれも次第に改善が認められ、第24病日にはPCR検査でも陰性化を確認し、第25病日に人工呼吸器を外した。
 
 ただ、自力で痰を排出できなかったため、再び挿管した。第27病日には、CTで肺炎像は消えていた。

カレトラをアビガンに変えたら即効

 東京慈恵会医科大学葛飾医療センターでも、カレトラを投与したが下痢症状が増悪したため、アビガンに変えたら著しく効きめがあったという。

 患者さんは、58歳男性。入院7日前に39度の発熱で、近所の医師に診察してもらったがX線で肺に異常は見られなかった。しかし、症状が改善せず、同医療センターを受診、肺炎像が見つかった。PCR検査も陽性だった。

 入院時の体温は38.6度、頻呼吸、倦怠感、腹痛、下痢を認め、全身状態は「やや不良」というから、かなりぐったり気味だったのだろう。
 
 治療は、最初、抗マラリヤ薬のヒドロキシクロロキンを、次いで、
カレトラを投与したが、下痢を悪化させたので、中止した。

 全身状態も悪化し、入院4日目には酸素投与が必要になった。重篤化へ一歩手前だったのかもしれない。

 入院5日目からアビガンの投与を始めた。すると、24時間後には解熱傾向を認め、酸素投与も中止、消化器症状も著明に改善した。
入院9日目に提出したPCR検査は陰性だった。

肺炎患者5人すべてが回復

 船橋中央病院では、アビガンを早期に投与した新型コロナ肺炎患者5人すべてが軽快した。

 その中で、高血圧などの基礎疾患のある60代女性を紹介しよう。この患者さんは、入院8日前からノドの痛みと発熱の症状があった。6日前に別の医院で診てもらい、X線では肺に著しい変化は見られなかった。しかし、4日前に体温が39.7℃に上昇、息苦しくなった。

 入院時は、体温37.1度に落ち着き、SpO2も97%と標準値内だったが、CTで右肺に陰影が見つかった。

 入院当日夕刻からアビガンの投与を始めた。気管支喘息もあり、オルベスコなども処方した。翌日から咳、微熱、下痢、食欲低下など自覚症状軽快。入院5、6日後にPCR検査も陰性化し、アビガンの内服を中止し、8日後に退院できた。

 同院は、5人の患者について、「アビガン投与開始は夕刻となることが多かったが、投与翌日に自覚症状が悪化した症例はなく、遅くても 2、3 日後には自覚症状の軽快が確認できた。」と報告、また、少数の症例なので効果を判定するには限界があると明記したうえで、「新型コロナウイルス感染症に対して有望な薬剤と思われた。」と考察している。

 以上のような報告を読むと、自分や家族が新型コロナに感染したら、医師に「アビガンを」と頼みたくなる。もちろん、投与例は少ないので、その効き目が確証されたわけではない。どの報告にも、「さらなる検証が必要」等の但し書きがなされている。

 ただ、検証には時間がかかる。もともと新型インフルエンザ用の治療薬として承認されているので安全性は確認されている(妊娠中の女性には使用禁止)。となれば、いま感染している人は投与を望むだろう。

 使用するには、適応外使用の院内での手続きと患者本人の同意が必要だが、どこの病院でも、患者が頼めば医師は検討してくれるのだろうか。

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