北朝鮮の終戦宣言熱望は、在韓米軍撤退が狙い?

北朝鮮の非核化交渉は、朝鮮戦争の終戦宣言が焦点になってきたので、最近の動きをまとめてみた。

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①終戦に熱心な南北

終戦宣言を強く望んでいるのは北朝鮮だが、韓国も積極的に動いている。

シンガポールで開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議に出席した韓国の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は8月5日、北朝鮮が強く求めている朝鮮戦争の終戦宣言について、「継続して協議している。米国、中国ともかなり協議している」と述べた(聯合ニュース)。

6日には、北京で北朝鮮6カ国協議の代表だった韓国、中国の高官が会談し、非核化について意見交換する。終戦宣言についても集中的に協議するとみられている(聯合ニュース)。

文在寅(ムン・ジェイン)は、7月のインタビューで「終戦宣言は韓半島(朝鮮半島)非核化や平和協定など恒久的な平和定着を牽引する里程標」と語り、「締結65周年の今年中に終戦宣言をすることを政府の目標として北や米国と協議する」と述べている(中央日報)。

4月の南北首脳共同宣言に盛り込んだ「2018年内に終戦宣言」を何としても実現しようとしている

しかし、こうした文政権の動きに国内の保守派は批判的だ。北朝鮮に厳しい「朝鮮日報」のアン・ヨンヒョン論説委員は、北朝鮮が「「戦争は終わったから国連軍司令部を解散し、北方限界線(NLL)もなくせ」と言ってくる可能性もある。在韓米軍の撤退も要求するかもしれない」と慎重さを求めている。

②米国はクールダウン

米国側の姿勢は、6月の米朝首脳会談前には、トランプ大統領が終戦宣言に関して「合意に署名する可能性がある」と述べて、ノーベル平和賞候補と持ち上げられたこともあったが、いまは政権としては、非核化なしには終戦宣言もない、との態度でクールダウンしている。

たとえば、ハリス米駐韓大使は韓国メディアに対して2日、「終戦宣言を締結するには非核化に向け相当な動きがなければならない。(しかし)現状ではそのような動きを目にしていない」と否定的だ(朝鮮日報)。

そして、「米国は北朝鮮が「核(兵器)申告リスト」を提出しなければ終戦宣言論議に応じられないという見解を北朝鮮側に伝えた」と朝鮮日報は報じている。

北朝鮮は、交渉の中で米国のこうした拒否姿勢に接しているのだろう。7月23日に韓国向け宣伝サイト、「わが民族同士」で、終戦宣言を巡り「遺憾なことに米国が突然立場を変え、拒否し始めた」と批判、米国に終戦宣言受け入れを説得するよう韓国政府に促したという(共同通信)。

③北が終戦宣言にこだわる理由

それにしても、法的拘束力もなく形式的にもみえる終戦宣言に北朝鮮はなぜこだわるのだろうか。朝鮮日報がいくつか見方を推測している。

まず、「終戦宣言をすれば法的拘束力とは関係なく米国の軍事攻撃の名分がなくなる」との判断が働いているのではないかというものだ。金正恩政権が強く望む「体制保証」がかなり確保される。

あるいは、終戦宣言後は平和協定・不可侵条約・米朝国交正常化論議も自然と弾みがつくと見通しているからというもの。

さらには、国連軍司令部解散・在韓米軍撤退、北方限界線(NLL)無力化などの狙いがあるのではという見方もある。

このほか、非核化を遅らせるための交渉戦術として終戦宣言を取り上げているとの見方もある。北朝鮮が得意とする「サラミ戦術(サラミソーセージを薄く切るように交渉・検証を段階的に細かく分ける)」で非核化を遅らせようというわけだ。

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