米国、イラン制裁再開 なぜ、影響と今後

米国のイランに対する経済制裁再開が7日から始まった。トランプ大統領の対決姿勢は、両国の緊張を高め、中東情勢を不安定化させるだけでなく、関税攻勢で生じた米欧間の亀裂をさらに拡大させている。

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なぜ、制裁するのか

今回の経済制裁再開の理由について、トランプ大統領は6日に出した声明の中で説明している。
イランは、2015年7月のイラン核合意によって、道が開いた貿易や金融取引で新たな資金を手にするようになり、その資金を、核搭載可能なミサイルの製造やテロへの資金援助に使っている。そして、「きょうまで、イランは、米国とその同盟国を脅し、国際金融システムを崩し、テロを支援している」と非難している。

どんな制裁なのか

今回は制裁再開第1弾で、11月5日に第2弾として石油や金融にまで範囲を広げた制裁が予定されている。

第1弾の中身は、
「イラン政府は、米ドルの購入(The purchase or acquisition of United States bank notes by the Government of Iran.)ができなくなる。また、イランと金(ゴールド)や貴金属の取引のほか、黒鉛、アルミニウム、鉄鋼、石炭の直接的・間接的な供給も制裁対象だ。イラン通貨取引の大きな部分は禁じられ、イランの自動車産業も制裁対象となる。アメリカとヨーロッパで製造された航空機をイランに販売することもできなくなる(ニューズウィーク)。(制裁の概要を記したプレスリリース
イランの取引相手国、企業も制裁の対象となる。ルノー、プジョー、フォルクスワーゲンといった欧州の自動車メーカーがイランに自動車工場を持っており(前出ニューズウィーク)、欧州への影響が大きい。

このため、EU、ドイツ、フランス、英国は、制裁への対抗措置として、イランに進出する欧州企業への米制裁の無力化を目指す「ブロッキング規則」を7日に発動すると表明した(日経新聞)。

欧州は、米国の核合意離脱にも反対していたが、トランプ大統領の同盟国の欧州も軽んじる「アメリカ・ファースト」のやり方に我慢の限界に来つつあるのではないか。

今後の動向

イラン国内では、「トランプやアメリカではなくハサン・ロウハニ大統領に向かっている。核開発より経済を優先してアメリカのオバマ前政権などと核合意にこぎつけたロウハニは今、イランの経済苦境の理由を国会で証言するよう、国会議員たちから迫られている」(前出ニューズウィーク)。

イランは、北朝鮮の金正恩氏のように独裁者が意のままに政治、外交を動かせない。トランプ大統領による首脳会談の提案も、米国が一歩でも引かない限り、国内強硬派から「軟弱」と批判されるので、簡単には受けられないだろう(共同通信)。

いまのところ対話の糸口がなさそうで、制裁が効いてくれば、国内で不満が高まり、対米強硬派の勢いが増すのではないか。

トランプ大統領は、イランの敵国イスラエル寄りの政策を推進し、ユダヤ系やキリスト教福音派といった親イスラエルの支持層を固める思惑があるという(東京新聞)。11月の中間選挙まで、イランとの関係は袋小路に入ったままにしておくのだろうか。

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