「出生地主義」廃止をスクープの「AXIOS」は 昨年1月にできたばかり トランプインタビュー

アメリカで生まれた子供は、自動的にアメリカ国民になる--これは出生地主義という国籍の決め方だ。日本は血統主義と言って、親の国籍で決まる。国内で生まれても日本人にはなれない日本に比べ、アメリカはいかにも移民国家らしいやり方だ。でも、トランプ大統領はその出生地主義を廃止しようとしている。

大統領が廃止を明らかにしたのは、アクシオス(AXIOS)という昨年1月にできたばかりの米ネットメディアとのインタビューだ。10月29日に収録し30日にその一部が公開された(日経新聞)。

AXIOSのサイトにアクセスすると、見出しに「独占(Exclusive)」とうたい、記事で出生地主義(Birthright Citizenship)の廃止を「トランプの移民に対する強硬策の中でも最も劇的な動きだ」と位置付ける。

トランプ大統領はインタビューで、こう述べる。
「我々の国は、人が来て子どもを産めば、その子はアメリカ国民になれる世界でも唯一の国だ。それは馬鹿げている(It’s ridiculous.)。終わらせるべきだ」(記事は、出生地主義は西側諸国を中心に30カ国以上が採用しているとの注釈を付けている)。

出生地主義廃止の法的手続きについてトランプ大統領は「いつも憲法の修正が必要と言われるがそんなことはない。大統領令で可能だ」「(廃止のための)大統領令を作っているところだ」と近く、大統領令を発表することを表明している。

11月6日の中間選挙直前に、アメリカの伝統的な政策に言及したのは、保守層の支持固めを図る狙いと見られているが、インタビューを伝える記事は「AXIOS on HBO(番組名)がこの秘密の計画を知っていることに大統領は「私以外は知らないと思っていた」と驚いた」「AXIOS on HBOは、何週間も前からホワイトハウスに近い筋をはじめ複数のソースからトランプの計画を知っていた」と書いている。

トランプ大統領自らが持ち出した話ではなく、質問されたから答えたという形式になっているが、AXIOSと大統領の間であらかじめ打ち合わせていたインタビューだった可能性もある。

出生地主義を調べてみると、大統領令では変更できないというのが定説で、共和党のライアン下院議長が早速トランプ批判するなど興味深いが、今回は、トランプ大統領をインタビューにひっぱりだした、あるいは、大統領が番組を利用したAXIOSのことを最後に書きたい。なぜなら、トランプ政権下でスクープを連発している異色ネットメディアだからだ。

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スクープ連発

実は、AXIOSは昨年1月18日にスタートする頃からアメリカメディアでは話題になり、その後のスクープ連発で日本でも取り上げられていたので、知っている人もいるかもしれない。遅まきながらの紹介だ。以下は、ZUU online産経新聞に拠る。

創業から半年あまりの間に、こんなスクープを連発している。
▽4月に米中首脳会談が行われる事をいち早く報じる
▽アメリカの「パリ協定」からの離脱
▽メディアサイト、米バズ・フィードの2018年上場
▽トランプ政権での権力闘争や予算計画等を詳細に報じる

会社を設立したのは、既存大手メディアからの出身者で、創業者は、2007年にワシントン・ポストの記者から、政治専門メディア、ポリティコを立ち上げたジム・バンデハイ氏。彼は社内対立で2016年にポリティコを退社していた。同じく退社したメンバーの他、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポスト等の有力紙の記者を引き抜いてスタートさせた。

経営陣には民主党のヒラリー・クリントン元国務長官に仕えた人物や、直近まで共和党のマッカーシー下院院内総務の首席補佐官だった人物も含まれ、党派色は薄いようだ。

現在は記事を無料公開で、広告が収入源。バンデハイ氏は、2、3年のうちには広告収入を全体の半分に抑え、残りの半分は購読料とイベントなどで稼ぎたいと語っている。その購読料は「1万ドル未満は想像できない」と述べ、米メディア関係者を驚かせた。

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