米朝首脳会談 ありそうなシナリオ 平和宣言で成功を演出

米朝首脳会談が北朝鮮の非核化を進展させるという期待は急速にしぼんでいる。むしろ、在韓米軍の削減や米単独による制裁緩和をトランプ大統領が言い出すのではないかと米政権の内外から心配する声が飛んでいる。

来週は、2月27、28日にベトナム・ハノイで2回目のトランプ・金正恩による米朝首脳会談が開かれるが、ロサンゼルス・タイムズの記事をベースに見るべきポイントを整理してみた。

同紙は、会談の成果に懐疑的だ。「非核化への道筋がはっきりしない中で、政権の内外で、トランプが人目を引くような平和宣言に同意し、北朝鮮からの確かな約束を得られないのに譲歩を申し出るのではないかと心配されている」という。

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在韓米軍削減を心配する専門家

超党派のカーネギー研究所のスーザン・ディマジオ研究員は「朝鮮半島ウォッチャーが一番恐れているもののひとつが在韓米軍削減です。米側が交渉に持ち出せるし、北朝鮮には願ってもないテーマ」と語る。つまり、米国のアジア戦略、対中戦略といった骨太な思考はほったらかして、目先の交渉で成果をあげるためには、米軍削減は相手が絶対に乗り気になるテーマだから米国側からすれば使いたくなるカードと言いたいのだろう。

米議会も同様の懸念を抱いており、下院では、在韓米軍の縮小を事実上禁止する法案が提出されている(韓国から米軍撤退=朝鮮半島ほったらかしを心配する米議会)。

ここで目先の成果とは、平和宣言のことだ。朝鮮戦争はいまだ休戦の段階で、終戦に至っていない。トランプ大統領は休戦状態を平和宣言でドラマチックに終戦化させることで首脳会談の成功を演出しようとしている(同上ロサンゼルス・タイムズ)。

ただし、平和宣言が出されようとも、それは法的な拘束力のある平和条約というよりも政治的な宣言にすぎない。平和条約にするなら、休戦協定に署名したすべての国の承認と米議会、国連安全保障理事会の批准が必要だ。

北朝鮮の非核化が進んでいるならば、平和宣言を出すのもいいが、肝心の非核化はいっこうに具体化されていない。北朝鮮の隠された核兵器設備や長距離戦略ミサイルを撤廃するには、「数百人の国際査察団が入り、核弾頭の撤去、ウラン、プルトニウム濃縮施設の閉鎖、北朝鮮科学者への聞き取り、備品の配備解明などが必要だが、金正恩委員長はこうした大規模な取り組みに同意する兆候はまったくない」。

トランプ大統領もお手上げのようだ。19日、記者団に対し「(非核化は)急いでいない」と5回繰り返し、「(非核化に)差し迫ったスケジュールがあるわけ、ではない」と語った(朝日新聞)。首脳会談では、非核化についてはあまり進展しないことをあらかじめ明らかにして予防線を張ったのだろう。

会談結果の見るべきポイント

こうして見てくると、首脳会談の結果の見るべきポイントは、トランプ大統領が会談の成功を演出するためにどこまで譲歩したかだろうか。政権にはボルトン大統領補佐官のような強硬派もいるからもちろん譲歩するだけにはならないとは思うが。

まずは、譲歩の姿勢が、非核化、北朝鮮への制裁緩和でどう表れるか。非核化については、すでに北朝鮮が言明してきた寧辺(ヨンビョン)の核施設の廃棄は認めるが、北朝鮮がこれにプラスαを上乗せしてくるか。核廃棄の具体的な道筋を少しでも示すか。

制裁緩和は米側も何らかのメリットを北朝鮮に与えるのではないか。米国の単独緩和や米軍削減はさすがに踏み込めないだろう。そうなると、成果をアピールするには、双方にとって毒にも薬にもならない平和宣言に頼ることになりそうだ。今回は宣言にまで至らずとも何らかの協議の場を設置して演出するかもしれない。素人なりに推理した今回首脳会談のシナリオだ。

トランプ大統領が最近の演説で語っているストーリーがある。オバマ政権時に北朝鮮との戦争になりそうだった、それを平和に引き戻したのはオレだ、と(ニューヨーク・タイムズ)。オバマ政権時のアドバイザーやCIAのスタッフは反論しているが言い続けている。

先のロサンゼルス・タイムズによると、「私はノーベル平和賞は取れない」と言っているそうだが、北朝鮮に対するとき、「平和」はトランプ大統領のキーワードになってきた。

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