トランプ、再選されるのか 「ミスター、ミズ民主党」不在の大統領選

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 トランプは再選されるのだろうか--このテーマに絞って、調べ、まとめてみました。共和、民主両党とも楽勝、圧勝のシナリオはなさそう。米バージニア大の研究チームは「両党は完全に互角」と判定しています。

 勝敗を決するのは、スイング・ステート(激戦州)、そして、前回2016年の大統領選でもカギを握ったラストベルト(衰退した工業地帯)の票の行方。11月3日の投票日は、まだかなり先ですが、基本ポイントをまとめてみました。ニュースをよく読んでいる人には物足りない内容かも知れませんが、トランプVS民主党候補者の対決の概観、見るべきポイントはつかめると思います。
 かなり長文になりましたので、目次を付けました。各項目ごと独立して読めます。

   目次
   ポイント1 いずれかの圧勝はない
   ポイント2 今回も”関ヶ原”は「ラストベルト」
   ポイント3「反トランプ」で結束できるか

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0.選挙までの主要スケジュール

 本文に入る前に、米大統領選の主要スケジュールを確認しておこう(出所:BBC)。共和党は、トランプの候補指名が確実なので、大統領選までの焦点は、民主党候補者が決まる7月までの同党予備選の行方だ。

3月3日 スーパーチューズデー→16の州と準州などで予備選・党員集会が行われる。代議員の3分の1の獲得が決まるので、誰が民主党候補になるか、かなり見えてくる。

7月13~16日 ウィスコンシン州ミルウォーキーで民主党大会。大統領候補を確定する。代議員3979人のうち、それまでの各州予備選で半数以上(1990人)を獲得した候補者がいれば、党大会の投票で指名されることになる。

8月24~27日 ノースカロライナ州シャーロットで共和党大会。トランプ指名が確実。

11月3日 大統領選挙
 

1.低支持率のトランプに勝ち目はあるのか

 トランプ大統領の支持率は、2017年1月の就任以来、多くの世論調査で50%を越えたことがほとんどない。有名なギャラップの世論調査を見ると、支持率は、35~45%の間をほぼ上下してきた(図1)。

(図1)出所=ギャラップ(https://news.gallup.com/poll/284156/trump-job-approval-personal-best.aspx)

   平均支持率40%

 平均支持率は40%で、過去の大統領(1938~2020年)の平均支持率53%に比べるとかなり低い。一方、不支持率は、就任月を除いて一貫して50%を上回っている。

 この低支持率ぶりを一見すると、再選は危ういと思える。みずほ総合研究所の安井明彦・欧米調査部長は、「大統領選挙を想定した世論調査だけをみれば、トランプ大統領はどの民主党候補と戦ってもおそらく負ける。特にバイデン上院議員と戦ったら、かなりの差がつくだろう」(ロイター、1月1日付)と語る(ただし、安井氏は、それでもトランプ優勢と見る)。

 実際、少し古いが、昨年6月にFOXニュースが実施した世論調査は、トランプ氏が民主党各候補と対決した場合、バイデン氏に10%、サンダース氏に9%の差で負けるという結果になった(時事通信)。

   現職が圧倒的に有利

 しかし、米大統領選は、現職が圧倒的に有利だ。露出度が高いせいだろう。戦後の米大統領12人のうち、二期目に挑んだものの再選を果たせなかったのは、フォード、カーター、ブッシュ(父)の3人だけ(NHK 以下のくだりもNHK記事による)。

 3人が敗北した原因は二つあり、党内の造反と景気の悪化だった。造反とは、失政やスキャンダルで、トランプには、どちらもたくさんありそうだが、共和党は、上院の弾劾裁判評決で造反者がロムニー上院議員1人しか出なかったように、トランプ一本で固まっており、大がかりな造反はありそうもない。

 景気の悪化は、パパブッシュの時に、クリントンの「問題は経済だ(It’s the economy)」という言葉が、情勢を一変させた過去もあるとおり、有権者にとって投票を左右する強い関心事だ。だが、現状は、米国経済は好調で、際立った悪化の兆しは見られない。外部環境は、トランプ有利の状況にある。

   絶対に投票するトランプ支持層

 さらに、民主党の有力候補者の間で、政策、価値観に大きなズレがあるのもトランプ再選に有利に働きそうだ。伝えられているように、バイデン、ブティジェッジは中道、穏健派で、サンダース、ウォーレンは左派、大きな政府論者だ。

「反トランプ」「次の4年はまっぴら」という思いは同じでも、自分とは、価値観がズレた政治家が民主党の候補者になったときに、投票に行ってくれるのか--民主党にとって頭痛の種だろう。

 米大統領選挙の手順もトランプに有利に働くという。米国では、投票するためには事前に有権者登録という手続きが必要で、面倒な手続きをしても絶対投票に行く、という支持者が勝負の鍵となる。
その点、トランプの支持者は、熱狂的な有権者が多く、必ず投票に向かう。

   最近は、オバマ、クリントンの支持率上回る

 こうしたことから、支持率が低くてもトランプ再選の可能性は十分にある。支持率も上昇気味で、ギャラップ調査では、1月は49%とこれまでの最高を記録した。1期4年目の1月という同じ時点の支持率を他の大統領と比べてみると、オバマ45%、ビル・クリントン47%と、驚くことに再選された人気大統領を上回っている

 米バージニア大学の政治学科研究チームが昨秋に出した見通しでは、「両党は完全に互角」との判断だ。民主、共和がリードしている州の選挙人票の数は総計248票になり、大統領選での勝利に必要な選挙人票270票に届かないというのだ(AFP)。

 どちらかが楽勝、圧勝するという結末はありえず、結局、両党が拮抗している「スイング・ステート(激戦州)」での勝敗が運命を決することは間違いない。

2.決戦・激戦州(スイング・ステート)

 前回2016年の大統領選でも、スイング・ステート勝利の効果は如実に表れた。ヒラリー・クリントンは、総得票数ではトランプを上回りながら、スイング・ステートでの11州123人の選挙人争奪に敗れ、トランプとの戦いに涙をのんだ。米大統領選は、各州で1票でも多い候補者がその州の選挙人すべてを獲得する「勝者総取り方式」だからだ(メーン州とネブラスカ州は例外)。

   激戦州の戦いに圧勝したトランプ

 スイング・ステート11州は、※1に示したが、このうちH・クリントンが勝ったのは、バージニア(選挙人数13人)、コロラド(9人)、ネバダ(6人)の3州だけだった。結局、選挙人獲得数で、トランプ95人、H・クリントン28人と、トランプがスイング・ステートを制し、圧勝した。

※1 バージニア(13人)、ウェストバージニア(5人)、オハイオ(18人)、ケンタッキー(8人)、テネシー(11人)、ミズーリ(10人)、アーカンソー(6人)、ルイジアナ(8人)、フロリダ(29人)、コロラド(9人)、ネバダ(6人)。カッコ内は選挙人数。

 どこをスイング・ステートと見なすかは明確な基準があるわけではない。この11州は、NHKが2016年の大統領選前に流した記事をベースにしている。

 米大統領選は、州ごとに同じ政党の候補者に投票するパターンが比較的安定している。よく言われるが、共和党は、南部、中西部に強く、民主党は、ニューヨーク、マサチューセッツなどの東部、カリフォルニアなどの西部に強い、というパターンだ。

 共和党が強い州は「赤い州」、民主党が強い州は「青い州」と呼ばれている。NHKの記事は、2012年以前の過去6回の大統領選で、6回すべて共和党が勝った州を赤、すべて民主党が勝った州を青に色分け、さらに5回勝った州をピンクと水色で分けている。上記の11州は、その色分けから外れた、どちらにも転びうるスイング・ステートだ(このリンク先記事の真ん中より少し下にスイング・ステートの地図が出てくる。黄色い枠の白い州だ)。

 赤、青の州は、両党にとって揺るがない、計算できる州のわけだが、その選挙人合計は、民主党青い州242人(水色を加えると257人)、共和党赤い州102人(ピンクを加えても158人)と、過去の投票パターンからは圧倒的にクリントンが有利だった。

 選挙人総数は538人で、当選するには270人が必要で、トランプは、スイング・ステートで、112人の選挙人を獲得しなければ勝てない状況だった。

   青い州を赤い州に変えた

 前述したように、11州の戦いでトランプは圧勝だったが、それでも獲得数は95人。まだ17人足りなかったが、青い州の、ペンシルベニア(20人)、ミシガン(16人)、ウィスコンシン(10人)、水色州のアイオワ(6人)で勝ったため、306VS232でクリントンに勝つことができた(図2)。

(図2)出所=ジェトロ「2016年大統領選挙結果」(https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/75868c1865baed2c/us_election2016_1213.pdf)

 つまり、共和党は、スイング・ステートの圧勝に加え、青から赤への引っくり返しが必要だったわけだ。

 そして、この引っくり返したペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン州は、いわゆる「ラストベルト(Rust Belt)」地域だ。選挙後にメディアで散々解説されてきた言葉なので、いまさら感はあるが、鉄鋼、石炭、自動車などでかつて栄えていたが、いまは衰退してしまった地域で、ブルーカラー層が経済再生を掲げるトランプを強く支持した。

 これらの地域でのトランプの勝ち方は、州内の一部の郡で飛び抜けて集票するところに特徴があったようだ。ミシガン州デトロイト郊外のマコーム郡では、トランプが4万8000票差で勝利し、ミシガン州を制するのに必要な票の4倍を獲得した。

 また、ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外のウェストモーランド郡でも、5万7000票差で勝利し、得票差はペンシルベアニア州全体よりも大きかった(ウォールストリート・ジャーナル、以下のくだりも)。

   安泰ではないトランプのラストベルト人気

 選挙後も、こうしたブルーカラー郡でのトランプ支持率は上昇しているという。WSJ/NBCニュースが昨年9月ごろ実施した世論調査によると、地域のブルーカラー郡では、19年には49%がトランプの仕事ぶりを評価すると回答した。18年からは横ばいだが、17年の44%からは上昇している。

 ただ、トランう安泰というわけではない。そもそも経済は再生したわけではない。むしろ、悪化している。地域77郡の雇用は2017年が0.5%増、18年は0.6%増にとどまり、雇用の伸びはその前の2年間の1%を下回った。全国平均(17年は1.5%、18年は1.3%)にも届いていない。

 芳しくない経済情勢を反映して、「次はトランプを支持しない」という有権者ももちろん出始めている。それに、特定の郡では圧倒的なトランプ人気も州全体には浸透していない。

 最新(昨年9月ごろ)の世論調査によると、ウィスコンシン、ミシガン両州ではトランプ支持率は45%かそれ以下、ペンシルベニア州では40%を割り込んでおり、大半はトランプ氏の仕事ぶりに否定的という。

 ミシガン、ウィスコンシン州は、16年の選挙で1ポイント未満の得票率差でトランプがギリギリ勝利した州。安泰にはほど遠く、18年11月の中間選挙では、民主党が知事選、上院選とも勝っている。トランプが8ポイント差で勝ったオハイオ州でも、上院選で民主党候補が約7ポイント差で共和党候補を破った(日経新聞)。

 ミシガン州の元民主党責任者は、「民主党はマコーム郡を失っても、州は制覇できる」と語り、特定の郡で負けても大差をつけられない戦略で挑むようだ(前出ウォールストリート・ジャーナル)。

 スイング・ステートとラストベルトが次の選挙でも”関ヶ原”になるのは間違いない。誰が民主党の候補になるかで、情勢も変わってくるだろうが、大接戦になることだろう。

3.「ミスター、ミズ民主党」不在で勝てるのか

 共和党の候補者は、事実上、トランプで決まりだが、対決する民主党候補者に、民主党を代表するような「ミスター、ミズ民主党」が見当たらない。オバマ政権で8年間、副大統領を務めたジョー・バイデンが民主党の「顔」にふさわしい経歴だが、いまひとつ華に欠け、党全体を盛り上げるには役不足に思える。

 トランプの不支持率は一貫して50%を超えているので、彼らがすべて投票に向かえば、トランプ打倒は難しくない。「反トランプ」で結束すれば、民主党はトランプ再選を阻止できるはず。しかし、前述したように、候補者間の政策、価値観のズレは大きい。誰が候補者になっても「ミスター、ミズ民主党」にはなれないのではないか。

 そんな中、民主党の候補者選びが2月3日のアイオワ州党員集会を皮切りに始まった。集計に混乱が続いたものの、同州では、バーニー・サンダース上院議員(78)と、ピート・ブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長(38)が頭ひとつリードした。

 アイオワ州は、白人が多く、アメリカの縮図とは言い難い社会構成であるし、党大会に出席して投票する代議員の数も少ない。しかし、最初に勝ち負けを判定する州であることからメディアの注目度が高く、また、無名だったカーター、オバマのようにアイオワ州の勝利がサプライズとなって、はずみをつけたこともあり、特別な存在感がある。

 そこで同州でリードしたサンダース、ブティジェッジの二人に絞って、民主党を結束させるパワー、求心力、集票力をチェックしてみよう(日経新聞=「サンダース氏 最高齢の「若者の星」」、「ブティジェッジ氏 「神童」で名門大卒の新星」)。

   サンダース、人気に偏り

 バーニー・サンダースは、20歳の時、シカゴ大キャンパスの学長室に仲間と立てこもり、大学学生寮で白人を優遇する人種差別政策を撤回させようとした。1962年のことだから、世界で学生運動が高まった60年代後半よりもかなり先んじている。経済格差是正も約60年間、主張し続けてきた正真正銘のリベラリストだ。

 公立大学の無償化、政府による国民皆保険、時給15ドルの全国最低賃金の導入などを掲げ、最高齢ながらも若者の支持率が最も高い。

 ただ、16年の大統領選で18~29歳の投票率は46.1%と65歳以上(70.9%)を大幅に下回っており、若者人気はあてにならない面もある。

 仮にサンダースが大統領候補に選ばれても、その政策が左派的すぎる、との評が民主党穏健派に二の足を踏ませそうだ。「エスタブリッシュメント層からすると、新婚旅行でソビエトへ行き、ベネズエラのチャベス氏(故前大統領)を応援するなど、ありえないという感覚。民主党内でも反ビジネスの主張などやりすぎだという声もある」と渡辺靖・慶応大教授は指摘する(東洋経済オンライン)。

 黒人などマイノリティー層の取り込みも課題だが、19年10月、プエルトリコ系のオカシオコルテス下院議員(30)の支持を得たのは強み。オカシオコルテスは、18年の下院中間選挙で、大番狂わせを演じた。明るく元気な姿をテレビで見た人も多いだろう。リベラル派から絶大な人気を誇っている。指名候補の戦いの中で、オカシオコルテス効果が確認されれば、トランプにとって脅威だろう。

   黒人票を集められないブティジェッジ

 ピート・ブティジェッジ(Buttigieg)は、舌を噛みそうな名前だが、父親はマルタからの移民者だ。マルタは、イタリア半島の長靴のつま先から少し離れた、人口40万人の小島国だ。

 ブティジェッジ自身は、ハーバード大学で歴史と文学を学び、優等の成績で卒業。英オックスフォード大に留学して、ここでも哲学、政治学、経済学で最優等の成績を収め、秀才ぶりを発揮した。フランス語、スペイン語、アラビア語、ノルウェー語など8カ国語を話せるという。

 卒業後、有数のコンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーで働いたあと、29歳の若さでサウスベンド市長になった。米国で人口10万人以上の市の市長としては最年少の記録だそうだ。

 政治スタンスは中道で、ビジネス界からの抵抗は少なそうだ。さらに、ゲイであることをカミングアウトし、男性との結婚を公表しているのは、リベラル層にアピールするとの見方もある。

 最大の課題は、黒人票だという。ワシントン・ポストなどが1月に実施した調査では、黒人有権者の支持率はわずか2%と、主要候補で最低だった。同じ白人男性のバイデンが48%だったのに比べあまりにも低い。

 サウスベンド市長就任直後に同市初の黒人警察署長を降格したことや、昨年6月に起きた白人警官による黒人射殺事件の対応への不満などが背景にあるといい、根深そうだ。黒人の有権者が多い南部サウスカロライナ州で、2月29日に行われる予備選は恐らく芳しくない結果に終わるだろう。逆に健闘すれば、民主党の戦える候補になりうる。

   同性愛への抵抗感も

 同性愛も投票に二の足を踏む要因になりうる。アイオワで同性愛者と知らずにブティジェッジに票を投じた女性が、そのことを知り、信仰を理由に投票の撤回を求めることが起きた(AFP時事)。

 ブティジェッジが大統領候補になったら、いまサンダースやウォーレンを支持している若い世代は投票するだろうか。38歳の若さに共感する有権者も出てくるかもしれないが、その勢いはまだ不透明だ。

4.専門家の勝敗予測

 いまの時点で専門家たちは、大統領選の決着をどう見ているのだろうか。

 先に引用したNHK記事の高橋佑介解説委員は、「再選確率60%(?)」、みずほ総研の安井明彦・欧米調査部長は、「支持率を見ればトランプ氏に勝ち目はないようにみえるものの、大統領選の過去のパターンから考えれば再選される可能性が高い」とトランプ優勢と見る。

 一方、渡辺靖・慶応大教授は、「今の景気や株価が続けばトランプ氏に有利に働く。現段階では五分五分」と見る。まあ、11月までに紆余曲折、いろいろあるだろうが、いまのところ、トランプやや優勢のようだ。

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