単純労働受け入れで外国人労働者はどれだけ増える

入国管理法の改正法案が臨時国会で審議中だが、大きな政策転換のようなので調べてみた。

ネットで記事を読んでいると「これまで認めていなかった単純労働が可能になる」といった表現がひっかかった。コンビニや居酒屋へ行けばアジア系の若者がいっぱいいるのに「なぜ?」。数年前、三越前にある居酒屋で働いていたアジア系のおにいちゃんに尋ねたら「ベトナムからの留学生」と言っていた。今回の改正法案で何が変わるのか?

まず、現状を調べてみると、日本で働く外国人労働者は127万8670万人にのぼる(2017年)。2008年の2.6倍だ。内訳があって、うち約45.9万人が日系人などの定住者、永住者らだ。次に多いのが資格外活動の約29.7万人。留学生のアルバイトはここに分類される。就労時間が週に28時間以内に制限されている(首相官邸、資料10,11㌻)。

次いで、技能実習の約25.8万人。この人たちも単純労働の現場を支えているが、1993年に導入されたこの制度の本来の目的は国際協力にある。実習生受け入れ企業が長時間労働させたり賃金未払いといった悪質なケース(ITmedia)もあり国際協力とは冗談みたいだが、日本の技能を開発途上国の若者たちに伝えようという趣旨で始められ、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(技能実習法第3条第2項)と法で規定されている(国際研修協力機構)。今回の改正法案は人手不足の解消が狙いであることを政府が明言しているが、人手不足解消の手段に技能実習は使えない。

なお、在留外国人数は今年6月末時点で過去最多の263万7251人で、外国人労働者数と136万人の差がある。この中には不法労働者もかなりいるのだろう。

審議中の新制度は、すべての業種に適用されるわけではなく、人手不足が深刻な業種に限定される。「特定技能1号」を受け入れるのは次の14業種。「特定技能1号」は、一定の知識・経験者が対象。期限は通算5年で家族帯同できない。
外食、農業、建設、介護、ビルクリーニング、漁業、飲食料品製造、素形材産業、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊

「特定技能2号」を受け入れるのは、次の5業種程度。「特定技能2号」は、熟練した技能者が対象。1~3年ごとの期間更新が可能で、更新回数に制限はないというから永住も可能だ。家族の帯同も認める
建設、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊(朝日新聞

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多い年で10万人+αの外国人労働者が増える

政府は開会中の臨時国会で法案を成立させ来年4月から新制度をスタートさせたいとしているが、果たしてどれだけの外国人が日本で働くことになるか。

日経新聞が5月に政府は「2025年ごろまでに人手不足に悩む建設・農業などの5分野で50万人超の受け入れを目指す」という数字を報道している。この時は、受け入れが14業種ではなく5業種だったので50万人を上回りそうだ。

毎日新聞は3日で、政府関係者への取材で「2019年度に受け入れる人数を最大約4万人と想定している」と伝えている。日経の報道は7年で5業種50万人だから、年平均7万人程度。初年度は4万人で、その後次第に増え、多い年で10万人程度というイメージだろうか。14業種に増えたことでこれにどれだけオンされるのか。

国会では「実質的な移民政策ではないか」と野党は追及しているが、多い年で10万人を受け入れる態勢を整える議論をもっとしてもらいたい。毎日新聞の2日夕刊で和田という記者が「新制度について「移民政策か否か」といった定義を巡る議論以上に、外国人の受け入れ環境をどう整備するのかという現実的な議論が国会に求められる」と書いているが賛成だ。

「ドイツの場合、ドイツに居住し続けようとする外国人には600時間のドイツ語研修を義務付けているほか、ドイツ社会のルールや法律についてのオリエンテーションも義務付けている」(日経ビジネス)。日本もそういう時代に入ったのではないか。

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