シェール革命が日本に迫る、自衛艦のペルシャ湾派遣

イランに攻撃されるかもしれないペルシャ湾航行のタンカーは「自国で守れ」と言い始めたトランプ大統領。同盟国に軍事費の負担をもっと増やすよう求めてきた大統領ならば言い出しそうなセリフだが、2000年代後半に米国で起きたシェールオイル・ガス革命もトランプ発言を後押ししている。
トランプ大統領は、「われわれは、そこ(ペルシャ湾)へ行く必要もない。米国は今や(飛び抜けて)世界最大のエネルギー供給国になっているからだ!」とツイートしている。
大統領の言うように米国は原油生産量世界最大だ。それも昨年、45年ぶりにトップに立った。
また、石油純輸出国に変わりつつある。週間の記録ではあるが、昨年11月末に石油輸出が初めて輸入を上回った(ロイター)。ここでの「石油」とは、原油+ガソリンなどの石油製品で、原油輸出は日量320万バレルだった。生産量世界9位のクウェート(302.5万バレル)を上回る。
一時でも、「石油純輸出国」になったのは米国内でシェールオイルが生産されるようになったお陰だが、シェール革命の威力を知っている業界のIONエナジーも「大変驚くべきこと。こうした状況は今後も頻発するだろう」と述べるほどだ(同上ロイター)。週間統計は振れが大きいため、安定的に輸出量が輸入量を上回るようになるのは、今年か2020年と見られている。
米国のこうした変化ゆえに、中東からの原油輸入も減っている。米国の2018年の原油輸入量は、28.31億バレルにのぼるが、そのうちペルシア湾岸諸国からの輸入量は5.37億バレルで、19%を占めている。サウジアラビア、イラク、クウェート、アラブ首長国連邦などからの輸入である。

米国が提唱している警戒海域 ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡

 まだ20%近いシェアなのだから、トランプ大統領が、「ペルシャ湾に行く必要がない」とまでツイートするのは誇張しすぎだが、サウジ、イラクなどが主要メンバーであるOPEC諸国からの原油輸入が半分を占めていた2000年代に比べると、この10年ほどで様変わりである(SAFETY4SEA)。

米国の外交にも変化がもたらされるだろう。野村総研の木内登英研究員は「米国が原油・石油製品で純輸出国に転じつつあることは、中東地域での米国の政治・安全保障政策にも大きな影響を与え得るだろう。かつてほど、同地域からの原油供給に配慮しないで、様々な政策を決めることもできる」と指摘している(NRI)。

トランプ大統領の「タンカーは自国で守れ」発言は、米国主導で多国籍の有志連合を結成する動きに向かっている。25日に、米国がフロリダ州タンパで2回目の会合を開き、詳細を説明する予定になっている。19日の1回目の会合では、「対イランの軍事連合ではなく、ホルムズ海峡周辺の監視体制を強化して航行の自由を守る目的だなどと説明したもよう」という。25日は、米軍と各国の役割分担などオペレーションの詳細を米側が説明するらしい(日経新聞)。

自衛隊の艦船をペルシャ湾に派遣するのか否か、近く日本は大きな決断を迫られることになるが、因果をたどれば、シェール革命が引き起こした世界情勢の変化とも言える。

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