「GAFAにカネと権力を集中させない」 その論議の中身

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アマゾンのスマートスピーカー「Amazon Echo」が夫婦の会話を勝手に録音し、夫の部下に送信してしまうという誤作動が昨年、アメリカで起きた。IT成長期ならば、「とんだ災難でしたね。ITもまだまだ技術が未熟」と笑ってすませたニュースかもしれないが、ITがビジネス、社会の隅々にまで入り込んでいる今は、ITの薄気味悪さを際立たせる出来事だった。夫婦は、家にあるすべてのAmazon Echoを返品した。

そんな身の回りの例だけでなく、フェイスブックの5000万人分の個人データが流出し、2016年の米大統領選に利用されるという米国を揺るがす不祥事が昨年明らかになった。フェイスブックは議会でも追及されたが、窮地は免れた。ユーザーの多くもフェイスブックを見限ることはできなかったが、「IT企業に操られているのではないか」、「IT企業の影響力が強くなりすぎた」という警戒感を強めたに違いない。

各国政府も、強くなりすぎたIT大手企業、いわゆるGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)を規制しようという動きを強めている。

米司法省は7月23日、米IT企業に対して、反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反の可能性を視野に調査を始めると発表した。実名は挙げていないが、念頭にあるのは「GAFA」だろう(日経新聞)。

独禁法の目的は、巨大企業が市場を支配し、価格も意のままに設定し、消費者に不利益をもたらさないようにすることにあるが、GAFAに対しては、もっと広く解釈しようという論議が巻き起こっているらしい。

そのあたりの最新知識を在米ジャーナリストの岩田太郎氏が、わかりやすく整理して、解説してくれている(ビジネス+IT=GAFA規制「12の論点」 ついに姿を表した新しい枠組みとは)。

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独占だけでは違法性を問えない

従来の独禁法の解釈では、たとえ市場を独占していても、消費者に不当な価格の支払いを強いたり、選択肢を狭めたりしなければ違法ではないと見なされていた。

アマゾンでこれまでよりも安く買えた経験は珍しくはない。IT企業はむしろ消費者に利益をもたらしていることも多く、確かに違法というのは一面的かもしれない。

しかし、それは独禁法の適用範囲がどんどん狭められてきた結果であり、1890年のシャーマン反トラスト法は、目的と適用範囲がもっと広かったと、岩田氏は解説する。

さらにIT企業という過去になかった事業形態の登場で、「裁判所による新たな解釈、新たな法律の制定、そして新たな独占の定義が必要であることが認識されるようになった」という。

岩田氏は、新たな枠組みとして議論されている考え方を6つ挙げているが、ここでは影響の大きそうな3つ紹介しよう(自分なりの理解で書いているので、岩田氏が言わんとするところとずれている可能性もある)。

①金融政策
フェイスブックが6月に発表した暗号通貨、リブラに対する規制だ。岩田氏は、「当局の介入の口実は山ほどある」と指摘、マネロン防止、取引処理能力不足、セキュリティ上の穴、急落した時に耐えうるか、送金詐欺への対処、ユーザーのデータ管理およびプライバシー保護、金融政策の無力化に対する規制などを挙げ、リブラは「IT企業を規制したい当局にとり、飛んで火に入る夏の虫であったわけだ」と述べる。なるほど。

②著作権
IT企業は、場を提供しているだけであって、そこに掲載されるコンテンツには名誉棄損の法的責任を持たないとしてきた。しかし、「コンテンツに対してアカウンタビリティ(説明責任)を負わせることによって規制を行うべきだとの声が米論壇で急速に高まっている」という。

③データ価値の開示
米上院で超党派で検討されているのが、IT企業が取得したデータの金銭的価値を開示するよう義務付ける案だ。「石油の世紀からデータの世紀」と言われるように、いまやデータが富を生む源泉になってきた。ネット上の無料サービスも利用するには、個人情報を提供しなければならない。「データの世紀」のいまは、売っていると表現してもおかしくない。そのお値段がいくらなのかオープンにしなさいというわけだ。

結論が出るには年単位の時間がかかる

岩田氏は、「これらの新しい枠組みに共通するのは、価格や市場占有率など消費者保護だけではなく、企業の振る舞い、さらには情報の非対称性から生まれるカネと権力の集中防止が、「独占禁止」の概念に組み入れられていることだ」と締めくくっている。前半で書いた、強すぎるGAFAに対する何とは知れぬ不気味さや強すぎる企業への警戒心をきちんと反映させている。

GAFAへの規制について結論が出るには、年単位の時間がかかると見られている。今後の論議をウォッチしていきたい。

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