破格の買収額だったVRオキュラス フェイスブックは爆売れを期待 

誰もがスマートフォンを持つようになり、その売れ行きにかつてほどの勢いが失われる中、「ポスト・スマホ」の本命とIT関係者らが期待しているのが、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)だ。

IT業界の勝ちランナー「GAFA」の中では、フェイスブックがVRに照準を定め、2014年にVRハード・ソフト企業、Oculusオキュラス VRを20億ドルで傘下に収めた。同社は、クラウドファンディングを活用して開発資金を集めており、そんなベンチャー企業の買収金額としては破格で、VR市場の拡大にかけるザッカーバーグCEOの期待の大きさをうかがわせた。

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Oculus買収後

オキュラス・クエスト(128GB)

その後、Oculus VRはフェイスブックグループにおけるVR事業の中心として機能し、3種類のヘッドセットやVRコンテンツを開発してきた。いまはフェイスブックテクノロジーの一事業部門で、社名は消えたが(MoguraVR)、ヘッドセットの製品名にはOculusの名を残している。

今年5月発売の「オキュラス・クエスト(Oculus Quest)」は、アマゾンで5万円台から売っている。下位機種の「オキュラス・ゴー(Oculus Go)」は2万5000円程度で買える。フェイスブックもいまや機器メーカーでもあるのだ。工場は持っていないだろうけど。

Oculus VRの創業メンバーたちはもうフェイスブックには残っていない。最後に残っていたネイト・ミッチェルも今年8月に辞任を表明した(Forbes)。

フェイスブックに買収されたインスタグラムやワッツアップの創業者も誰一人として会社には残っていないという。

VR部門の売上はまだ1億ドル

VRに話を戻すと、フェイスブックで稼いでいるのはVRのハードではなく、ソフトのようだ。ザッカーバーグCEOは、9月25日に開かれた自社イベントでVR部門の売上を明かした。「Oculus Store」の売上が1億ドル(約110億円)を超えたというのだ(TechCrunch)。

Oculus Storeとは、VRのコンテンツを販売しており、スターウォーズの世界を体験できるVR作品などがあるそうだ。中でもオキュラス・クエストがらみのコンテンツの売れ行きが好調という。「新型ヘッドセットのユーザーがコンテンツに多くの資金を費やしていることを示唆している」と日経新聞は書いている。

売上高558億ドルのフェイスブックにしてみれば、1億ドルの売り上げなんて微々たるものだが、25日の自社イベントの場では、オキュラスヘッドセット向けのSNSである「ホライズン」を2020年に始めると発表、「ザッカーバーグCEOは「将来重要になる社会インフラを構築するための新たなステップだ」と述べ、フェイスブックやインスタグラムなどに続く主力サービスに育てる考えを示した(同上日経新聞)」。

ザッカーバーグCEOにインタビューしたCNETの記者は、同CEOのVRへの熱い期待をこう評している。
「同氏は依然としてFacebookの将来をVRに賭けており、それはちょうど、故Steve Jobs氏が10年前にAppleで「iPhone」に賭けたときのことと似ている」。

フェイスブックの売り上げの約98%は広告収入だ。SNSフェイスブックやインスタグラムは、広告を載せて収益をあげられるが、ホライズンも、同じような稼ぎ方を想定しているのだろう。

YouTubeには、ホライズンを紹介する動画がアップされている。3次元の仮想空間の中で飛行機レースに参加したりする動画だ。ただ、それを見ても、何がおもしろいのか、楽しいのか正直よくわからなかった。若い世代を中心に広がっていくのだろうが、アクティブユーザー23億人を有するSNSフェイスブックに肩を並べるのは難しいのではないかと感じた。

調査会社のAR/VR市場予測は強気

しかし、当方はVR体験ゼロ。ゲームにも興味がわかない。だからVR感度が鈍いのは間違いなく、そのせいかVRの将来についてIT業界の見方とはかけ離れているようだ。IT専門調査会社IDC Japanが6月に発表したAR/VRの世界市場予測はもっと強気だ。

ハード、ソフト、および関連サービスを合計した世界のAR/VR市場の規模は、2018年の89.0億ドルから2019年は168.5億ドルに急伸し、2023年に1606.5億ドル(約17兆3000億円)に達すると予測している。18~23年の年平均成長率は実に78.3%だ。

世界市場を牽引するのは金融、インフラ、製造、公共分野などの法人部門で、その伸びに比べ、ゲームやビデオ鑑賞など一般消費者部門の伸びは劣るが、それでも年平均成長率は52.2%と高い(日経XTECH)。

AR/VRがそれほど伸びるとは実感を持てないのだが、どんな風に使われるかというと、法人部門では、訓練・研修での活用や、製造業の組み立て、公共分野(水道・ガスなど)の工事作業をARで支援したりという用途が伸びるというのがIDCの見立てになっている。

クリティカルマスへの途上にある=ザッカーバーグ

ザッカーバーグCEO自身は最近のインタビューで、「VRを持っている人がそこまで(収益をあげるほど)多くないので、投入した資金をすべて取り戻す、あるいは、VRを少なくとも「Xbox」向けゲームの開発よりも優れた投資にすることができない」「われわれはクリティカルマス(普及率が急速に増加する分岐点)が存在すると考えていますが、現在われわれが注力していることの多くは、そのクリティカルマスに到達するためのものです」と、VR事業が開花するにはまだ時間がかかることを認めている(同上CNET)。

しかし、その一方で、「VRは人々が思っている以上に大きくなると思います」とこれまで同様、VRの潜在パワーを信じている。今後数年のうちに、行く末が見えてくるのではないか。

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