トランプ弾劾、これからどうなる 慎重だったペロシ氏が心変わりした理由

トランプ大統領弾劾に慎重だった民主党のナンシー・ペロシ下院議長が、9月24日(現地時間)、弾劾訴追に向けた審議を開始すると表明した(共同通信)。

急展開で弾劾へ

ペロシ氏の心を訴追へと向かわせたのは、ずっと取り沙汰されてきた「ロシア疑惑」ではなく、ウクライナ、ゼレンスキー大統領との電話会談がもたらした新疑惑だ。電話は、7月25日で、ロシア疑惑に比べ、かなりホットで急展開になっている。

疑惑は、9月20日に複数の米メディアが伝えた。もともとは、米情報機関からの内部告発が発信源だった(時事通信)。

電話会談の中で、トランプ大統領は、民主党のバイデン前副大統領の息子に関する調査をゼレンスキー大統領に促したという(日経新聞)。

息子に関する調査とは、ウクライナ検察が2016年に民間ガス会社を捜査していたが、バイデン氏の息子は、このガス会社の役員で、月5万ドル(約550万円)の報酬を受け取っていたという。当時、副大統領だったバイデン氏は捜査に当たっている検事総長を解任させようとしたそうで、息子を守るために解任圧力をかけていたのではないかという、本当ならば、これも大スキャンダル。それに輪をかけて、トランプ大統領は、外国首脳に政敵を打ち倒す捜査を要請したわけだ。

電話疑惑をメディアが報ずる前の9月12日、米下院司法委員会は、トランプ大統領に対するより踏み込んだ弾劾調査を可能にする決議案を採択していた。これにより、公聴会を開いたり、証人に対する質疑の権限が強化された(ロイター)。

共和党を不利にしたクリントン弾劾

しかし、この時点では、ペロシ氏ら民主党指導部はまだ弾劾に慎重だった。ペロシ氏は弾劾を避ける理由として「国民を分断するから」と語ってきた。まあ、それは表面上の理由で、弾劾しても、罷免に3分の2以上の賛成が必要な上院では勝てる見込みがないこと、民主党のクリントン大統領が弾劾されたとき、共和党はかえって支持を失ったことなどがためらわせたようだ(「民主党リーダー、ナンシー・ペロシがトランプ弾劾を控えている理由」)。

それが一転して、弾劾に向かうようになったのはなぜか。上院で共和党の造反議員を獲得できるとメドが立ったのか。上院は100人の議員のうち過半数の53人が共和党。3分の2の賛成を得るには、少なくとも共和党から20人の造反議員が出なければならない事情は変わっておらず、メドが立ったとは思えない(時事通信)。(なお、弾劾の根拠、手続きについては、こちら)。

バイデン氏は、副大統領まで務め、来年の大統領選で、民主党の有力候補のひとりなので、バイデン氏を守るために方針を変えたのだろうか。しかし、今後、民主党はバイデン氏の疑惑も晴らしていかねば、とても有権者の支持は得られないだろう。

トランプ大統領が、ゼレンスキー大統領との電話で、ウクライナへの軍事支援を遅らせる措置をとったという新たな情報が23日夜に明らかになったことが、民主党の怒りをかき立てたとの指摘もある。
米議会が承認した支援金の提供をトランプ大統領が保留してしまった、それも大統領選に有利になるようにという自分の目的を果たすために(ウォールストリート・ジャーナル)。

数カ月はかかりそう

今後は、下院の6つの委員会(司法、情報特別、外交、監視・政府改革、歳入、金融)弾劾に向けての調査が進められる。ウクライナ問題を扱うのは情報特別委だ。

調査にどれくらいの期間がかかるか見通しは難しいが、クリントン大統領の弾劾の時は、「下院での2カ月にわたる審理を経て4つの訴因について採決が行われた。その後、上院での5週間の弾劾裁判の結果、無罪となった。だが、弾劾の訴追そのものはスター独立検察官が率いてきた以前の調査を基にしたものだ」(ブルームバーグ)。

前述のウォールストリート・ジャーナルの記事は、「大統領と共和党議員らにとって、目前に示された弾劾調査の危険性は明らかだ。しかし、弾劾手続きを進める民主党議員にとっての危険性も大きい」と指摘している。ペロシ氏は、着地点を思い描いて弾劾への道に踏み切ったのだろうか。そうは思えないのだが。