サウジ攻撃 戦争を回避できるかどうかはイラン革命防衛隊次第か

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石油施設への攻撃を受けたサウジアラビアと米国は、「イラン直接関与」にますます確信を深めている。

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「イラン南西部からミサイル発射」と米調査

サウジ、米国は、被弾現場を調査しているが、調査に詳しい人物によると、「イランが直接、イランの南西からミサイルとドローンを発射、攻撃したとサウジアラビアは確信を深めている」と、ウォールストリート・ジャーナルは17日(現地)伝えた。発射地点のイラン南西とはイラク国境に近いところだ。

現場からはイラン製の新型巡航ミサイル、Qudsらしきパーツの残骸が見つかった。被弾場所の北にあるクウェートで攻撃前にドローンの行跡が報告されており、イラン南西部から発射されたことを示唆している。ドローンとミサイルは、サウジのレーダー網に探知されない低空で進入してきたらしい(同上)。

サウジは、米国、中国に次いで、年間7兆円以上を軍事費に当てている世界第3位の軍事大国(GLOBAL NOTE)。米国の防空ミサイルシステムを導入しているが、低空侵入程度の技術で防衛網を突破されるなんて軍の面目は丸つぶれだろう。それに耐えるだけの自制心がサウジ軍首脳にあるのかどうか。

イランの対外政策は軍、保守派が主導

イラン政府はこうした米国の主張に反論し自らの関与を否定している。しかし、イランの革命防衛隊は、ロウハニ大統領のコントロールが効かない。大統領の知らないところで軍事作戦を展開してしまう。今後の展開もこの革命防衛隊の動きが左右しそうだ。以後の文章は、軍事ジャーナリスト、黒井文太郎氏が「BUSINESS INSIDER」に執筆した記事に拠る。

イランでは、最終的な決定権はロウハニ大統領ではなく、ハメネイ最高指導者が握っている。しかし、最高指導者が細かい指示を出すわけではないから「実際に決定権の多くを行使しているのは、いわばイスラム保守派=軍部連合とでも呼ぶべき陣営だ」。

黒井氏は、イランの統治構造を詳しく解説してくれている。

ハメネイ指導者には、これを補佐する側近集団「最高指導者室」があって、そのなかに安全保障政策を担当する「最高指導者軍事室」(室長はムハマド・シラジ准将)がある。

最高指導者軍事室の下には「イラン軍事参謀総長」(モハマド・バケリ少将)という役職が置かれ、このポストが事実上の軍部トップ。その指揮下に、イラン国軍とイスラム革命防衛隊、警察治安部隊がある。軍事組織が二つあるが、革命防衛隊はいわば1軍、国軍は2軍のような存在だそうだ。

ハメネイ最高指導者の意思をロウハニ大統領らに伝え、対外戦略を調整するのは、メンバー12人の最高国家安全保障評議会(SNSC)だ。大統領や外相など政府首脳も評議会のメンバーとなっている。政府が軍と意見を交わせる最高レベルの公式の場なのだろう。

評議会では、保守派、軍の影響力は大きい。前出の軍トップ、バケリ軍事参謀総長や、革命防衛隊司令官のホセイン・サラミ少将、国軍司令官のセイード・ムサヴィ少将、SNSC書記を務めるアリ・シャムカーニ少将らが名を連ねる。

シャムカーニ少将は正規の最高指導者代理人で、ハメネイ最高指導者の安全保障戦略面での最側近の顧問という。もうひとりの最高指導者代理人、サイード・ジャリリ前SNSC書記もメンバーに加わっている。

評議会のメンバー以外でも、ハメネイ最高指導者の外交顧問を務めるアリ・アクバル・ベラヤティ元外相や革命防衛隊「コッズ部隊」司令官のカセム・ソレイマニ少将らの影響力も大きい。

再攻撃に出れば最悪のシナリオ

コッズ部隊は、イエメンのフーシ派に対する工作、サウジに対する破壊工作を担当しており、ソレイマニ司令官はハメネイ最高指導者と直結しており、最高指導者から直接、対外的な謀略破壊工作をほぼ一任されているという。今回の石油施設攻撃がイランによるものだとすれば、コッズ部隊の仕業と、黒井氏はにらんでいる。

黒井氏の解説を読むと、今後の展開を推察するに、この最高国家安全保障評議会での議論がカギを握るのではなかろうか。サウジへの攻撃に対し、トランプ米大統領は、いつでも臨戦態勢を取ると強調する一方で、イランとの軍事衝突を望まないと繰り返している。16日に「例外はあるがサウジは私が新たな戦闘に巻き込まれたくないことを知っている」と指摘。「戦争を望まない」「イランは取引を望んでいる」などとも語った(日経新聞)。

面目をつぶされたサウジの軍が報復しようとしても米軍の助けなしには単独では動けないとみられている。

もちろん米国にも強硬派は存在するが、もしトランプ路線が守られるならば、変な話だが、ボールは先に打ったとみられるイランの側にある。革命防衛隊が再びサウジ攻撃やタンカー攻撃などに出れば、米国も強硬派が一気に勢いを増し、イラン攻撃が現実味を帯びる。

安全保障評議会は、「イランは関与してない」を前提に議論が進むのだろうか。米情報機関の盗聴やスパイを警戒するだろうから議論は建前で進んでしまうのかもしれない。だとすれば、ロウハニ大統領らが革命防衛隊の独断専行を止めるすべはない。